表紙








とりのうた 74



 二人の刑事は、ちらっと目を見交わした。
 若くて背の低いほうが、逆質問してきた。
「坂口さんが事情聴取されてるのを知ってるんですね? その理由もわかってますか?」
「はい」
 未夏の声が、初めて震えた。 とたんに、刑事たちの表情が鋭さを増した。
「小此木さん、貴方、坂口さんから何か事情を聞いてますね?」
「いいえ」
 強く言い切ってから、未夏は自転車から降り、足に力を入れてしっかりと立った。
「でも、重大なことを知ってます」
「事件に関係あることですか?」
「はい」
 あまりはっきり言われたため、刑事たちは逆に半信半疑になった。
「だって、本人から何も聞いてないんですよね?」
「はい」
 もどかしくて、未夏は叫び出しそうになっていた。
「彼と、お父さんのことです」
 父親? と呟いて、中年の木崎刑事がしかめ面になった。
「坂口社長? 助けを求めに行く気ですか? 確かに社長は大物ですが、我々警察は圧力に屈するようなことは……」
 つまり、圧力はかかっているのだ。 未夏はそう悟った。 坂口社長は、息子を救おうと彼なりに必死なのだろう。
 未夏は、細い声で尋ねた。
「一流の弁護士さんを雇いました?」
「そうですね、来ましたよ。 尻尾を掴まれないように黙秘を通せと言われたみたいです。 それから一言もしゃべらなくなりましたから」
 若い刑事が答えた。
 その瞬間、未夏は心を決めた。
 駄目だ。 坂口社長は『息子』を助けられない!
「私は、知ってることを話します」
 、気持ちが悪くなりそうだったが、未夏は自分を励ました。
「本当に重大なことです。 でもその前に、彼にわかってもらわないと。 会わせてください。 お願いします!」









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