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翌日の月曜日、未夏は坂口の会社の電話番号を名刺で調べて、昼休み前にかけてみた。
こちらの名前を告げて、少し待っていると、本人が電話に出た。
「坂口です。 小此木さん?」
「はい、昨夜はどうも」
「失礼しました、変なこと頼んじゃって」
「いえ、そんな。 あの、ちょっとお話があるんですが、今お時間ありますか?」
「ええ、平気ですよ。 何か?」
そこで未夏は、幸田が彼の携帯電話から番号を盗み見て、名簿屋か何かに売ったらしいことを話した。
「お友達に迷惑がかかるといけないから、一応お知らせしたほうがいいかな、と思ったんですが」
「ありがとう!」
驚くほど大きく、礼を言われた。
「たいていは大丈夫ですが、何人か嫌がるのもいるので、伝えておきます」
未夏はほっとした。
「それじゃ、どうも」
切ろうとしたとたん、早口の声が聞こえた。
「待って。 お礼しなきゃ。 どこかで会えませんか?」
「え? そんな大したことじゃ……」
「ええと、そうだ、今日は図書館の休館日だ。 そうですよね?」
「はい」
「これから予定あります?」
「今日ですか? いえ、別に」
「じゃ、港公園行きませんか? 晴れてるから、展望塔から海がきれいに見えますよ」
混乱しながら、未夏は首を伸ばして窓の外を見た。 確かにすっきり晴れわたっている。 でも、これって……デートの誘いじゃないのか?
「お仕事は?」
小声で訊くと、オーナー社長の息子らしい答えが返ってきた。
「ああ、働く時間はどうでもなります。 これからお宅まで迎えに行っていいですか?」
どうしよう。 降ってわいた提案に、未夏は動揺してしまった。
「ええ、あの、もちろん」
おい!
自分に突っ込みを入れたくなったが、承知してしまったものは取り消せない。 というより何より、取り消したくなかった。
電話を切ってから、未夏は茫然とベッドに座りこんだ。 やっと自分の気持ちがわかったのだ。
未夏は、坂口に惹かれていた。 達弥との間に立ちふさがっているのは、白井勇吾ではなかった。 急速に坂口という渦に引き寄せられる、自らの心だった。
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