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やっと小うるさい友人を追っ払って、牛肉の煮込みを食べ終わった後、未夏が家のトラックで来たと知って、達弥はますます当ての外れた顔になった。
「二人でドライブしようと思って、車で来たのにな」
「タイミング悪いね、なんか」
「邪魔もんだらけだしな」
横のテーブルに移って、割り箸ゲームで騒いでいる海の仲間たちに、達弥はジロッと目をくれた。
「友達送って行ったって、さっき電話で言ってたろ? あの性格悪そうな幸田さん?」
「いやー」
誤魔化しつつ、未夏は苦笑した。
「その言い方はちょっと」
「だってそうだぜ。 あの人とはあんまり仲よくしないほうがいいと思うな。 どっかの金持ちの携帯拾って、中に登録されてたセレブ連中のプライベート番号を売ったらしいよ」
「ええ? 信じらんない!」
未夏は仰天した。
「どうしてそんなこと達弥が知ってるの?」
達弥の視線があらぬ方角へ行った。
「夜のバイトしてるんだ、幸田さん。 『笹百合』ってカラオケスナックなんだけど、飲み会で偶然行って、ばったり。
平気な顔してたよ。 金が欲しいんだって。 だから、儲かることなら何でもするって言って、その話したんだ。 電話落とすほうが悪いんだと言ってた」
ついて行けない。 未夏はうんざりして、幸田とは仕事以外の付き合いはやめようと決めた。
賑やかな店から出ると、夜風がスッと吹きつけてきた。
「じゃ、今夜はここでお開きだな」
そう言ってキーを出しながら、達弥はさりげなく尋ねた。
「まだ気持ち決まらない?」
未夏は反射的に頷いた。 そして、そんな自分にびっくりした。 いったい何考えてるんだ。 今日こそOKの返事をすると、さっき決意したばかりじゃないか……!
その瞬間、何かが未夏の気持ちをガクンと引き止めたのだ。 何か得体の知れない未知の感情が。
「二十代初めなら、パッと決めちゃったと思うけど、この年になるとね」
「大人だから決断しなくちゃいけないときもあるよ。 いつまでかかる?」
そう、いつまでも待たせておけない。 未夏は追われるように答えていた。
「今月一杯。 あと一週間とちょっと」
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