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未夏はいくつか考えてみた。
「うーん、多すぎて決められない。 生まれたときから海の傍だったから。
ただ、無理して言えば」
「言えば?」
「初めてクロールが泳げた日。 友達とバレーボールしたり、ウィンドサーフィン教わったりとか……やっぱり、友達関係が多いかな」
「近くの友達か。 いいな。 僕は鹿児島の男子校へ行ったから、ここら辺には同級生がいないんだ」
それはまた随分遠くの学校へ。 未夏はびっくりした。
「大学もそっち?」
「いや、東京。 アメリカにもちょっと行ったけど」
留学か。 やっばりお坊ちゃまっぽい。 話を合わせるのが大変そうだ、と考えたとたん、ハッと思い出した。
しまった! フロッグハウスで達弥が待ってる!
大急ぎで時計を見た。 八時三分前。 もうじき家に着く。 チャリで飛ばして十分……だめだ。 自転車は図書館の駐車場だ!
未夏は頭をかきむしりたくなった。 見事に、完全に忘れていた。 達弥との約束って、自分にはそれぐらいの重みしかないのだろうか。
「すみません、ちょっと」
坂口に断わって、未夏は慌しく携帯を出し、達弥にかけた。
「あ、ごめん。 人を送ってたら遅くなっちゃって。
二十分ぐらいで行く。 うん。 いや、迎えに来なくて大丈夫。 すれ違いになると困るから。 うん、じゃね」
電話をバッグに入れて、再び坂口の横に戻ると、彼が尋ねた。
「彼?」
「え? ああ、どうかな」
未夏はどぎまぎした。
「長い付き合いのBF。 大学のときからだから、七、八年ぐらい」
「幼なじみって言うには、ちょっと年上か。 でも、青春時代を一緒に過ごしたんだね」
そう言われれば、確かにそうだ。 青春時代か…… 古い歌の題名みたいで、日常ではあまり使わない言葉のような気がした。
「悪いな、ほんとに。 僕のせいで遅刻だ」
「三十分ぐらい、よく待ったり待たせたりしてるから」
「結婚するの?」
ズバッと訊かれて、未夏の足が思わず止まりかけた。
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