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それはなかなかよいではないか。
未夏は内心嬉しくなって、大きく頷いた。
「うん、どうぞ」
未夏は海老入り海鮮丼にした。 こういうところで何食べるんだろう、と、坂口の注文を見守っていると、未夏に合わせたようにトロマグロ丼にしていた。
空はすっかり暗くなり、月の前に薄い雲がたなびいていた。 風はほとんど止み、湿度も相変わらず低く、戸外で食べるには理想的な天気だった。
「この間はどうも」
膝がテーブルの脚にぶつからないように横にずらしてから、坂口が言った。
「『夢眩』にいたでしょう? 友達みたいな人と」
「あ、はい。 親友の結婚が決まったんで、二人でお祝い会を」
未夏の顔がいたずらっぽくなった。
「頂いた券使って、半額ですみました。 ありがとう」
「そうか、そういう使い方もありだな」
坂口は、面白そうに目を光らせた。
すぐに運ばれてきた海鮮丼はおいしかった。 あまりかき込まないように気をつけながら、未夏は尋ねた。
「坂口さんと話していた方は、お父さん?」
「そう。 わかった?」
「感じが似てたから。 仲良さそうだったし」
「わりと気が合うんだ。 一卵性親子って言われたりする」
ちょっと照れた感じで、坂口はツルッと顔を一撫でした。 トロマグロ丼も味がいいらしく、話しながら魔法のように姿を消していく。 あっという間に器が空になった。
「うちは、お父さんとはあまり出歩かないな。 お母さんとはしょっちゅうだけど」
「親父とは仕事一緒だから。 あー、まだ腹減ってるな。 追加注文していい?」
痩せの大食いなんだ。 元気な男が好きな未夏は、楽しくなって顔一杯に笑みを浮かべた。
「じゃ、私はデザート頼もう」
「図書館に勤めてるのは、やっぱり本が好きだから?」
「それもあるけど、知り合いが司書だったのが大きいかな。 近くに住んでる桃山敦美さん。 すごくいい人なの」
未夏がオレンジタルトを半分ほど食べたところで、坂口はもうヒレカツサンドを平らげてしまっていた。
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