表紙








とりのうた 46



 ちょっと強引だが、女の子を誘うにはこのぐらい押しの強さが必要かな、と未夏は思い、招待を受けることにした。 とりあえず携帯番号とメアドを交換して、二人は公会堂の前で手を振って別れた。


 自転車でバビューンと直帰する道すがら、未夏はいろいろ考えた。
 もてるのは、悪い気分じゃない。 二股をかける気はないけれど、達弥への返事はもう少し待ってもらおうと思った。
 達弥が白井にライバル意識を燃やしているのは、間違いないようだ。 そして白井は、昔の博己とは幾分雰囲気が違っている。
 育ち盛りの十五年は大きい。 白井の現在と、今の心境がわかるまで、未夏は気持ちの切り替えができなかった。 新鮮なような、戸惑ったような、それなりに高揚した気分だった。


 そして翌々日、いよいよ基子と約束した十六日がめぐって来た。
 二人は、通勤ラッシュが終わった成田線に乗り、基子が持ってきたパンフレットを見比べながら、一路東京へ向かった。
 基子の狙い目は、大学の友達に紹介されたオートクチュール&プレタポルテのブティック『ブーケ・ドール』だった。 デザイナーが若く、まだそれほど有名ではないが、基子好みのフワフワ・キラキラな可愛さのあるドレスを作るのがうまいという話だった。

 池尻にあるその店は、予想よりずっと小さかったものの、ショーウィンドウに置かれた二体のマネキンのドレスを目にしたとたん、基子は吸い付いたように離れなくなった。
「うん、いい! これよこれ! ね?」
「そうだね。 リボンのつけ方が、すごく可愛い」
 二人は満足して頷き合い、並んで間口一間半ほどのブティックに入っていった。


 服のデザイン選びに一時間ほどかけて、それから採寸に入り、店を出たのは昼の十二時半ごろだった。
 夜は早く帰らないと、今でも門限に厳しい基子の父ちゃんに怒られてしまう。 二人は渋谷へ出て、坂口総合開発系列の高級レストラン『夢眩』むげんで昼食を取ることにした。









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