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翌日の日曜日は、あいにくの雨だった。 それも叩きつけるようなどしゃ降りなので、未夏は自転車通勤をあきらめてバスに乗った。
開館時間が近づき、窓越しにエントランスの外を覗いた幸田は、しかめっ面になって戻ってきた。
「ホームレスが並んでる。 五人もいる」
「雨だからね」
未夏が何気なく答えると、幸田はいっそう口を尖らせた。
「気になんないの? ここは図書館で、あの連中のシェルターじゃないのよ」
「まあいいじゃない。 最近のホームレスは身ぎれいにしてるし、中で騒ぐこともないし」
奥から出てきた滝山が、陽気に声をかけた。
「さ、今日も気を引き締めて行きましょう。 オープン」
日曜日は早番だ。 正午が近づいてきたので、未夏がロッカールームへ行こうとして廊下に出たとき、携帯が鳴った。
達弥からだった。
「そろそろ昼休みだろ?」
「ああ、うん」
「今、大町通りの交差点。 二分で図書館に着くから、メシ食いに行こ」
「うん」
気持ちの準備ができてなかった。 未夏は達弥のペースに乗せられて、自動的に昼食を約束させられてしまった。
達弥は、言うだけ言って、すぐに電話を切った。 車内からなので、急ぐのは無理ないにしても、普段の達弥より強引な感じがした。
ベージュの傘を差し、図書館前の段を降り切ったとき、丁度達弥の白い車が来て、前で停まった。
「すげー雨だな」
「全然小降りにならないね」
傘を畳んだ未夏が助手席に乗って、ドアを閉めると、すぐ発車した。
「どこ行く?」
「いつもの店でいいよ」
「うーん、いいよって言われると、新鮮味がないな。 昨日すっぽかしちゃったから、今日はイタ飯屋でどうだ?」
何張り切ってるんだろう。 未夏はいっそう乗りが悪くなった。
「いいよ、無理しなくても」
「無理じゃねーって。 それに、落ち着いたとこで話もあるし」
話? 仕事中の昼食時にプロポーズの返事はちょっと……。 それに、まだ肝心の気持ちが決まってないし。
ためらう未夏をちらっと見て、達弥は素早く言葉を続けた。
「いや、返事を早くしろとか言ってない。 別の話」
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