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いったい何をくれたんだろう。
好奇心が湧いて、包みを何度か手の上で引っくり返してみた後、未夏は思い切ってシールを取ろうとした。
そのときだった。 幸田みさが入口の階段をパッパと駆け上がってきて、ドアを開けるのが見えたのは。
反射的に、未夏は自分にもらった分の包みを引き出しに落とし、素早く閉めてしまった。
まだ正午を十五分ほど回っただけなのに、幸田みさはそわそわと入ってきた。 そしてカウンターに直行すると、未夏に訊いた。
「ねえ、坂口さんまだ来ないよね?」
昨日は四時頃だったから、今日も遅いだろうと思いつつ、やはり気になって早めに戻ってきたらしかった。
少々気の咎めを感じながら、未夏はパンフレットの角を揃えた。
「あーっと、さっき来た。 昼休みだからじゃない?」
幸田は棒立ちになった。
「えーっ? それで何て?」
「これ渡してくれって。 お礼に」
「お礼って……キーのこと、どう言ったの?」
未夏は視線を外すと、できるだけさりげなく言った。
「あの、さ、みさちゃん、引出しに入れてたよ。 このハンカチでくるんで」
四角く畳んだハンカチを見せられて、幸田は逆上寸前になった。
「それで? 返しちゃったの?」
「返した。 坂口さんもサラリーマンで忙しいでしょう? 三日も続けて来させるのは気の毒……」
「余計なことしないでよ!」
押さえた声で叫ぶなり、幸田は包みを引ったくって、ずんずんとロッカールームへ歩いていってしまった。
残された未夏は、ちょっと憂鬱になって、カウンターに頬杖をついて考えこんだ。
――余計なお世話だったかな。 でも、あまり引き伸ばすと逆効果だと思うなー。
それに、お坊ちゃんで、おまけにあのルックスで話し方なら、いくらでも女の子が寄ってくるよ。 追っかけしたって、遊ばれるだけじゃないのー?――
幸田のセレブ好き、わからないわけじゃない。 でも、『これ別荘の鍵で』なんてサラッと言える人種は、未夏には付き合いきれなかった。
――テンパって、仮にデートできたとしよう。 ドレスだ、靴だ、アクセだって、いったいいくらかかる? 司書の給料で、持つわけないよ――
預金通帳の残高が目に浮かんだ。 ぶるぶるっと首を振って、未夏はまたパンフレットの仕分けにかかった。
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