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この夏は、カラッと晴れた日が少なかった。 いつまでもどんよりした天気が長引き、とうとう梅雨明け宣言が出せなかったぐらいで、八月に入っても夏負けするほど暑くはならなかった。
水曜日は朝から雨で、四人は未夏の部屋に上がってゴロゴロしていた。
貞彦は、未夏の小さなテレビにファミコンをつないで、ドラクエにいそしんでいた。
「うへ、俺のスライムちゃんが!」
「そんなの自分の部屋でやればー?」
ベッドに基子と並んで座って、香りつきボールペンを分けっこしていた未夏が、床に座り込んでいる貞彦の背中に声をかけた。
貞彦は、振り向きもせずに答えた。
「うちだと母ちゃんがうるさいんだよ。 そんなゲームしてると目が悪くなる、頭がバカになるって」
「マリオカートなら、やってみたいけど」
基子が、ちょっとはにかんだ感じで言った。 耳ざとく聞きつけて、貞彦はピョンと立ち上がった。
「「じゃ、家にあるから持ってくる」
「あ、いいよ、そんなわざわざ」
あわてて手を振る基子に、貞彦はいかにも男っぽく、
「いいってことよ。 すぐだから」
と言い置いて、バタバタと階段を下りていった。
博己は、クッションに腹ばいになって漫画雑誌をめくっていたが、ふと顔を上げてリモコンを切り替えた。 テレビ画面がちょっと揺れた後、三時のニュースが映った。
「……被害者は住所不定、無職の山田庄一郎さん七十四歳です。 山田さんは半年ほど前からK緑地公園付近に住みつき、廃品回収などで生計を立てていたということです。
山田さんの頭を殴った凶器は、長い鈍器状のもので、金属バットではないかとみられています。 犯行が深夜の時間帯に行なわれたため、目撃者は今のところ発見されておらず、犯人の手がかりは見つかっていません」
「またホームレス殺しか」
不快そうに呟いて、博己はパチッと電源を切った。 そのとたんに、小さな箱を持った貞彦がドアを開けて叫んだ。
「おい、消すな! 俺のドラクエがー」
「大丈夫だよ。 ゲームのほうは切ってないから」
「ったく、心配させるなよ」
ぶつぶつ言いながらも、すぐ機嫌を直して、貞彦は箱からゲームソフトを出して振ってみせた。
「ま、いいさ、どっちみち。 今度はこっちやるんだから。 な、基子ちゃん」
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