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その278
娘の推理を黙って聞いていた公爵が、毒のくだりでいきなり姿勢を正し、フランシスに視線を送った。
「さすがわが娘だ。 よく筋道が通っている。 気の毒な娘婿たちのためにも、ぜひ証拠を掴まなければな。 よし、わたしが直接立ち会おう。 これからマニング先生を連れて、シモンズさんの家に行ってくるよ」
それを聞いたシモンズ夫人も、慌てて動き出した。
「ご案内します。 いえいえ、疲れてなんかおりませんよ。 この歳でも足は達者です」
「それではお願いしようか。 ただしゆっくり歩きなさいよ。 もう犯人に追われる心配はないんだから」
二人が緑の間へ向かって数分後、オズボーンがドアを開けて、部屋の中を素早く見回し、フランシスに尋ねた。
「閣下はどちらへ?」
「ああ、シモンズさんの家へ行ったよ。 入れ違いだったね」
「そうですか……」
ためらった後、オズボーンはフランシスに近づき、小声で伝えた。 椅子でふてくされているキャロラインには届かない声だが、兄のすぐ近くにいたジリアンにはほとんど聞き取れた。
「マクタヴィッシュから使いが来ました。 口頭での知らせで、ジェラルド様が亡くなったとのことです」
ジリアンは愕然とした。 思ってもみない知らせだった。
オズボーンはキャロライン夫人のほうを見ないようにしながら、声を低めて続けた。
「撃たれた膝のせいではなく、侯爵位を失ったらしいという風の噂を聞きつけた借金取りが、押しかけてきたのだそうです。 その一人が、高価な壷を持ち出そうとして争いになり、もみ合っているうちに銃が暴発して」
フランシスは床に目を落とし、考えながら髪を撫でつけた。 それからゆっくり、妹に視線を移した。
ジリアンは手を伸ばして、兄の手と結び合わせた。 フランシスが囁きかけた。
「お父様が戻ってくるまで、黙っているべきだろうか?」
心が乱れたまま、ジリアンはそっと頷いた。 もともと父への知らせなのだから、公爵が判断すべき問題だ。 しかし、それにしても……
兄妹が複雑な面持ちで立ち尽くしている前で、キャロラインは貴族的な顎をつんと上げ、老けたメーキャップが残る顔で、森まで延々と続く緑の芝生を見やっていた。
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