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表紙

手を伸ばせば その151


 お昼をぜひ食べていって、とマデレーンがせがむので、ジリアンは外出を母に知らせてこなかったことを気にしながらも、喜んで承知した。
 内輪の昼食だから、下の子供たちや家庭教師のエンディコットも同じ食卓で賑やかに食べた。
 パーシーがナプキンを結んで器用に象を作り、胡椒入れや塩入れに被せて、コリンたちとミニ・ハンティングを始めた。 食事を終えたジリアンは、マデレーンに引っ張られて、彼女の新しい部屋を見に行った。


 それは、婦人用の小ぶりな応接室といった雰囲気で、大理石の暖炉と楕円形の大きな鏡、一時代前に流行したトラファルガー・チェアー、枕型クッションつきの優雅なカウチなどが置かれていた。
 居心地のよさそうな部屋を見回しながら、マデレーンは息を弾ませて報告した。
「求婚している間、私の実家の家具を参考にして、いろいろ整えてくれてたんですって。 この部屋全体が、私への結婚プレゼントなのよ」
「思ったとおり、ハーブは気配りのいい優しい旦那様になったみたいね」
 ジリアンは、次々と家具の説明をするマデレーンを優しい眼差しで見やった。 少なくともこの姉は、明らかに結婚によって前より幸せになったらしい。


 姉妹二人は、象牙色のカウチに並んで座り、新婚の少々きわどい話に花を咲かせた。 マデレーンは恥ずかしがりで、具体的なことは何ひとつ口にしなかったが、夜のベッドは心地よかったようだった。
「初めはちょっと怖かったのよ。 たとえ相手がハーブでも。 だけど彼は忍耐強かった。 二人で幸せになろうねって言ってくれたわ。 だから楽な気持ちになれたの」
 私はきっと怖がらないだろう。 ジリアンははっきりそう思った。 相手がパーシーなら、何が起きても恐れない。
 でも、他の男性と抱き合うことは考えられなかった。 ましてジェラルド・デントン・ブレアなんて、キスすると考えただけでもゾッとした。
「ヘレンが逃げ出した気持ち、ほんとによくわかるわ」
 ジリアンが何も口にしていないのに、気持ちが自然に伝わったのか、マデレーンがそこでぽつりと付け加えた。









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