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その128
夜になって、フランシスは友達連れで帰ってきた。 がやがやと玄関広間でコートを脱ぎながら雑談していると、晩餐用に着替えたジリアンが階段を降りてきたので、友人から離れて陽気に声をかけた。
「ジリー、明日ペリー達と博覧会へ行くつもりなんだが、一緒に来ないか?」
たちまちジリアンの顔が光り輝いた。
「行く!」
スカートの裾を持ち上げて、淡いピンクの綿菓子のような姿で駆け下りてきたジリアンを、三人の青年が目で追った。 どの目にも、驚きと賞賛の色がくっきりと浮かんだ。
最近では慣れっこで気にも留めず、フランシスは気軽に紹介した。
「末の妹のジリアンだ。 こっちがアレック、ペリー、それにクリフ」
「初めまして」
ジリアンがにっこり微笑んで挨拶すると、十代終わりから二十代初めまでの青年たちは、一斉に息を吸い込むようにして、低い呟きを返した。
「どうも」
「よろしく」
あまり彼らが緊張しているので、フランシスは笑い出した。
「おいおい、どうした。 相手は、まだ十五の子供なんだぜ」
クリフと言われた金髪の青年が、喉に引っかかる声で反論した。
「そりゃ兄弟なら毎日見てるから慣れてるだろうが、こっちはもう……」
低く咳払いしてから、彼はぎこちなく続けた。
「何が舞い降りてきたのかと思ったよ。 夢のようにお美しいですね、レディ・ジリアン」
それから、フランシスに視線を戻して、遠慮なく言った。
「兄貴には全然似てないんだな」
フランシスは、わざとムッとしてみせた。
「妹は天使で、僕は悪魔か? 中身はそっくりと言っていいんだぞ。 どっちも向こう見ずで、いたずら好きで」
「じゃ、僕達とも気が合うね、きっと」
それまで無言で見とれていたペリーが、上ずった声を出した。
彼らは既に、外で夕食を済ませていた。 これから四人でビリアードを始めるらしい。 ジリアンは廊下の半ばで分かれて、食事室に向かった。
正餐用の部屋には、まだ親戚筋や招待客の一部がたむろしていた。 その中にはパーシーの姿もあったので、ジリアンは急いで近づいた。
片方のポケットに手を入れ、つまらなそうに壁の絵を見上げていたパーシーは、ジリアンに袖口を引かれて、ゆっくり振り向いた。
「コリンとリュースは?」
「控えの間で飯食って、もう寝てるよ」
「明日もどこかへ行く?」
「わからないな、朝になってみないと。 あいつら元気が余ってて、目を離すと悪戯し放題になるから、やっぱり連れ出さないといけないだろうな」
「子守り、ご苦労さま」
ジリアンは、いたずらっぽく目を光らせた。
「出かけるなら、ちょうどいいから、一緒に行かない?」
「どこへ」
「博覧会よ。 もう見に行った?」
「いや、まだだけど」
だるそうなポーズを止めて、パーシーはジリアンの正面に体を移した。 顔に活気が戻った。
「俺に連れてってほしいのか?」
「そうじゃなくて」
ジリアンは、手短に説明した。
「フランクが一緒に行こうって言ってくれたんだけど、コブ付きなの。 兄さんの友達が三人もついてくるのよ。 みんな初対面で、何話したらいいかわからないし、あなたとコリン達が来てくれたら、安心できるの」
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