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丘の家 42
史麻が尾口に電話して間もなく、パーティー手伝いの女子たちに先導されて、他の客たちがぞろぞろと帰ってきた。
船村が、得意顔の横川を見つけて肘でぐりぐりやった。
「このーこのー。 ゴールまで行ったんなら、なぜ知らせないんだよ。 俺たち裏庭の外れまで遠征させられたんだぜ」
「だから、その過程もゲームの楽しみの一つでしょ? 怒んないでビールでも飲みな」
そう返しながら横川は広間に入ってくる人数を確かめていた。
「七人しかいない。 残りはどうした?」
「疲れたって言って抜けたり、トイレに行くってエスケープしたのもいた」
船村がふてくされた表情で答えた。 怒るのは当然で、エース・グループは彼一人になってしまっていた。
キングとクイーンは、それぞれ三人戻ってきていた。 葉山麓郎はいたが、山根の姿はなかった。 一人も抜けがなかったのは、史麻のグループだけだったらしい。
寂しげな船村を、菊乃がなだめた。
「運悪かったわね。 三時からディスクジョッキーが来る予定だから、まだまだ楽しめるわよ。 もう三十分我慢して」
そして、不意に史麻のほうへ向き直った。
「史麻ちゃんも残ってね。 たった五分で謎解きしちゃったんだから、疲れてないでしょ?」
その言い方は、ほとんど命令に聞こえた。 史麻はへきえきして、こう言おうとして口をあけた。
『今日は他に行くところあるの。 タクシーも呼んじゃったし』
そのとき、すっと傍に人の寄ってくる気配があった。
涼しげな声が言った。
「それなんだけど、農園を案内してもらう約束したんだ。 小杉ハーブセンター。 ね、佐々原さん?」
声の主は、葉山麓郎だった。
どう考えたらいいかわからなかったが、とりあえずここに引き止められるよりは数段いいので、史麻は喜んでうなずいた。
「そう、ここら辺に薬草を栽培してる農園はないかって訊かれて」
ふと会場の話が途切れ、短い沈黙が落ちてきた。 周囲が自分たちの話に注目している感じがあって、史麻は戸惑った。
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