表紙

丘の家 40


 横川は、ますます張り切って日時計を隅から隅まで見回した。
「どうやら俺たち今のところトップだぜ。 勝ちてえー」
「あった!」
 佐野が、裏側の窪みにテープで貼り付けてあったビニール袋をはがし、中を覗いた。
「おめでとう! 宝は死海の懐に抱かれて」
「え、なに? 死海? それとも司会?」
 微妙なアクセントの違いにこだわった寺島あきの問いが、偶然にも謎を解いてしまった。

 四人は顔を見合わせた。
 横川が低くプッと吹いた。
「なんだよ、読んだら一発でひらめく謎でねえの」
「まあ、素人の作ったヒントだからね。 早いとこ戻ろう!」
 温室のエース組に聞かれないよう声を下げて、四人はそっと大広間に引き返した。


 大広間に入ると、窓際で煙草をくゆらしていた司会の新条が、愕然として体を起こした。
「ええ? もう全ヒント解いちゃったの?」
「そうです!」
 嬉しそうに、横川が新条の前に最後の紙を差し出した。
「賞品、新条さんが持ってるんですよね」
「あちゃー」
 窓枠に置いた携帯用灰皿で煙草を揉み消すと、新条は辺りを見回した。
「こんなに早く渡しちゃっていいのかな。 ええと、橋口くん、橋口くーん!」
 奥で手持ちぶさたにしていたバーテンが、カウンターの奥から出てきた。
「はい?」
「菊乃さん呼んできて。 五分で戻ってきちゃった組がいるって」
 バーテンは笑いながら、四人を見比べた。
「ゲームが得意なんですね。 はい、すぐ探してきます」

 すぐと言った割には、橋口は十分以上帰ってこなかった。 それで、四人プラス新条は、勝手にバーへ行って、飲みながら話し始めた。
 佐野は、実直そうな見かけに似合わず、くだけた様子でシェーカーを取り、上手にカクテルを作った。
「はいマンハッタン。 たしかトマトジュース冷蔵庫にあったよな。 ブラッディーメリーなんかどう?」
 焼酎カクテルを二杯空けて、顔が赤らんできた新条は、陽気になってシモネタで笑いを取ったあげく、ふと言い出した。
「他の連中、遅いな。 きっと何人かそのまま消えちゃうよ」





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