表紙

丘の家 38


 カウンターの近くに集まってきた人数は、男女とも八人ずつだった。、それを司会の新条が軽妙にしゃべりながら二列に並べた。
「今日は新しいメンバーが二人参加ですね。 ようこそ丘の上のプレイランドへ! と言ったって、みんなでワイワイと遊ぶだけですけどね。 でも、気のおけない仲間は多ければ多いほどいい。 そうですよね皆さん?」
 新条は手品のようにトランプを出し、中から絵札とエースを抜いてシャッフルした。
「今日は人数の揃いがいいので、宝捜しをすることにしまーす。 四人で一組になってくださいね。 さあ、引いて引いて」
 彼が扇のように広げて持ったトランプを、みんな一枚ずつ引いた。 史麻は、ダイヤのジャックだった。
「はい、同じ模様のカードの人同士でグループを作りましょう。 キングは? ああ、そちらに集まりましたね。 こっちがエース。 クイーンは? あ、白瀬さん、ほらここですよクイーンは」
 ジャックはキングの次に集まりが早かった。 トレーダーの横川が嬉しそうに史麻に挨拶するのを、エースを引いてしまった船村が残念そうに見ていた。 他には佐野というがっちりした青年と、寺島というほっそりした美人が同じジャック組だった。
 史麻が横目で探すと、葉山麓郎はクイーンの組に入っていた。 さっき司会者がナビしていたぼんやり型の女性、白瀬が、そばにピトッとくっついている。 残念だな、と思いながら右を向くと、キングの組から山根がこっちを見ていた。
 彼は、他の男性のように呑気な顔をしていなかった。 口の端が下がった厳しい表情で、眼が隼のように鋭く光っていた。
 史麻と視線が合って、山根はちょっと驚いたように瞬きし、無理に笑いを浮かべた。 しかし、どこか不自然な表情なのが、史麻の心に引っかかった。

「まず第一のヒントですよ。 四組とも別々の道筋をたどって宝を発見することになってます。 さもないと、一人がヒントを解いたらみんなドッとそこへ行って、競争にならなくなっちゃいますからね」
 そう朗らかに言いながら、新条は四つの封筒を出して、芝居がかった手つきでそれぞれの組に配った。

 封筒の中には、四枚のカードが入っていた。 みな同じことが書いてあって、それぞれに渡された。
 史麻は、青いリボン模様の紙に印刷された言葉を、眉を寄せながら読んだ。
――「花言葉は『死』」。 いやだ、縁起が悪い。 菊乃ちゃんは昔からちょっと悪趣味なところがあるから…… ――
「ええと、これどこかで聞いたことある。 そうだ!」
 寺島あきが思い当たって声を潜めた。
「クリスティーの短編にあったわ。 これ、たしかダリアのことよ」
「ダリアね。 玄関のところに活けてなかったか?」
「あったあった!」
 とたんに三人は活気付いて、史麻を真ん中に挟むようにしてどのグループより早く廊下に出た。






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