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友人の訪れ
結局、テオフィルとミレイユ一家はオルレアンには行かなかった。 ピエロの裁判を見守るためにパリに長居している間に、インフルエンザの流行は過ぎ去っていたのだ。
子供たちも、そろそろパリの珍しさに飽きて、生まれ育った故郷を懐かしがっていた。 だからテオフィルは新たに汽車を二車両雇って、買い込んだ土産と使用人の一部を二両目に乗せ、はしゃぐ家族と共にアミアンへの帰還旅行に出発した。
やがて柳が芽を吹き、川の底に身をひそめていた魚たちが鱗〔うろこ〕をきらめかせて泳ぎ出す早春になった。
雪の消えた庭で、ずいぶん脚が長くなったマッツが、ポニーを駆って低い障害越えの練習を始めた。
一方、長女のヴァレリーは物静かな庭師のジェラールとすっかり仲良くなり、彼の後をついては花壇の土を掘り返す作業に夢中になっていた。
末っ子のテランスは、このところめざましい発育ぶりで、はいはいの期間を一ヶ月ほどで終え、つかまり立ちを始めた。
彼はたいへん機嫌のいい子で、めったに泣かない。 水を頭にかけられる洗礼式でも、神父ににっこり笑い返したというツワモノだ。 盛大に泣き喚いたマッツとは対照的だった。
ともかく三人の子がみな丈夫で、ミレイユは幸せだった。
テオフィルも伸び伸びしていた。 普段は動きやすいように、普通の農夫のような身なりで精力的に働き、新しい家令のビセンテや秘書のマリオットとよく話し合って、屋敷の内外をしっかり把握していた。
そんな夫の助けになるように、ミレイユも小規模な集まりをたびたび催した。 お茶の会や園遊会、バザー、土地の楽団を雇った若者中心の踊りのつどいなどだ。 細々とした準備も、慣れるとなかなか楽しいものだった。
そんな会場で知り合って、商談や縁談がまとまる機会が増え、近所同士の絆が強くなった。
今度の伯爵、いや侯爵様は、先代よりずっといいし、地元を守り立ててくれる、という評判が定着した頃、特にミレイユにとって最高に嬉しいことが起きた。
空が高くなった四月の初めに、一台の馬車が表門から入ってきた。 そして遠慮がちに、正面玄関から少し離れたところで止まり、中からまず、山高帽をかぶった若紳士が身軽に降りた。
彼は手を差し伸べて、粋な旅行服を着た婦人を助け降ろした。 婦人はエメラルドのように輝く大きな瞳を周囲に向けながら、若紳士に話しかけた。
「うわ〜、なんて趣味のいい庭! きっとミレイユが設計したんだわ。 彼女、絵が上手いし、色彩感覚が抜群なの」
「屋敷もすごいな。 壮麗って感じだ。 まるでお城じゃないか」
「ちょっと気後れするわね。 やっぱり手紙を書いて、行きますって知らせたほうがよかったかな」
「リリ!」
そのとき、高い声が降ってきた。 二人がそろって顔を上げると、二階の窓が大きく開き、ミレイユがレースのショールを手に持って、夢中で大きく振っていた。
「来てくれたのね! 今すぐ迎えにいくわ。 待ってて!」
あのおとなしい、陰気なぐらいだった少女とは思えないほど、ミレイユは喜びに弾んでいた。
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