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新婚気分で
翌朝早く、ミレイユは夫の腕の中で目覚めた。
窓からうっすらと光が差し込んでいたが、テオフィルは頭を深く傾け、ぐっすり寝込んでいた。 でも彼の腕が首の下に置かれているので、ミレイユは自分でも不思議なほど安心していた。
もう一人ぼっちじゃない。 そう思えるのはすばらしかった。 体を伸ばしたかったが、彼を起こしたくない。 それでじっとしたまま、日が昇るにつれて次第にはっきりしてくる夫の彫りの深い横顔を、しばらく眺めていた。
そのうち、昨日の心ない暴言を思い出して、気持ちが暗くなった。 あんなひどい言葉を、周りに人がいるのに投げつけるなんて。
新しい愛人、というセリフも、少し気になった。 結婚前に恋人がいても仕方がないことだ。 自分たちは恋愛結婚ではないのだし、そんなことを咎める資格はない。
ただ、結婚生活の目新しさに慣れたら、彼が他の女性に目を移すかもしれないと思うと、寂しい気持ちになった。 たとえそうなっても、いざというときには支えになってくれるだろうが。
そんなことを考えながら見つめていると、睫毛が動いてゆっくり瞼が開いた。
目が合うとすぐ、テオフィルは妻を引き寄せてキスした。
「おはよう。 ちゃんと眠れたかい?」
ミレイユはうなずき、夫の胸に手を当てた。
「とてもよく」
「そろそろ起きるべきかな」
「お好きなように」
二人は微笑み交わした。 こういう甘やかな気持ちの交換が、新婚気分というものなのだろうか。 ミレイユはテオフィルに触れていると楽しかったし、彼のほうも手を取ったり肩を抱いたり、さっきのように挨拶という以上のキスを交わしたりするのが心地よいようだった。
テオフィルは、まだ眠いらしく、枕に頭を載せ直して目を閉じた。
ミレイユは起き上がってジェルメーヌを呼び、身だしなみを整えてから、髪を結ってもらった。 ジェルメーヌの器用な手がブラシをかける間、暇なミレイユの意識は、昨夜のジョスランとの食事を思い浮かべていた。
ジョスラン・デュルフェ子爵は、学校時代のこっけいな出来事をミレイユに聞かせ、彼女が思わず笑うのを楽しみにした。
それが一段落すると、男たちは領地の話を始めた。 ジョスランの土地は南にあって、良いワインが作れるので、なんとか生活の質を保てること、テオフィルの叔父が新大陸(アメリカ)の南部で貿易商として成功し、独身だったためすべての財産を甥のテオフィルに残してくれたことなどを。
「テオは昔から金運がいいんですよ。 学生の頃も賭けで負けたことがなかったし」
「大げさな」
テオフィルがそう呟いて、ワインを口に含んだ。 だがジョスランは負けていなかった。
「ほんとなんです。 家庭に恵まれなかった分、身を守る財産が増えていくんだと言われていました」
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