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夏は謎  -117- 全員集合







 翌日は日曜日だ。
 一番集まりやすい日だし、天気予報は曇りのち晴れ。 善は急げ、ということで、まだそう気温の上がらない朝のうちに、庭を掘ってみようと相談がまとまった。


 だから午後には、手分けして連絡を取った。 角が立たないように、両親が和一郎に電話をかけ、翼は会ったばかりの小橋夫人とケータイで話して、チビの丈矢が『謎のドア』の正体を見たいならどうぞと招待した。
 どちらも二つ返事で招きに応じた。
 その後、翼がケアホームにかけた。 そして、今から祖母の佐喜子を迎えに行くと係の人に告げた。
「グーちゃんは一分一秒でも早く帰りたいよなー。 それに、みんなが揃う『宝探し』に混ざりたいと思うし」
「空襲を思い出す防空壕なんて、見たくないんじゃないの? だから埋めちゃったんでしょ?」
 千登勢が怪しむように言った。
「いや、戦後しばらくは扉が見えてたよ。 両開きで、周りの土と同じような色に塗ってあった。 開けてみたかったけど、こんな巨大な南京錠がかかってて、ガチャガチャさせても外れなかった」
 滋の思い出語りに、妻と息子が一斉に顔を上げた。 そして同時に叫んだ。
「どこにあったの?」


 父の話によれば、防空壕の扉は地上から十センチぐらいの浅い所にあるはずだという。 それなら道具小屋に残っているスコップで充分だし、偶然掘り返したというチビの言葉にも合う。 明日は暑い中で重労働をしないですみそうだとわかって、翼は胸を撫で下ろし、足元軽く車を出しに行った。




 佐喜子は、ホームの部屋に入ってきた翼を見て、すがりついて喜んだ。「よかった〜。 よく来てくれたねぇ、翼! ここ寂しいの。 夜でもちゃんと見回りに来てくれるんだけど、一人でいる自分の家より、よっぽど心細いのよ〜」


 翼が迎えに行っている間に、敏美は千登勢を手伝って、佐喜子を迎える支度をした。 家を掃除し、布団を干し、寝室を開けて空気の入れ替えをする。 晩御飯は佐喜子の好きな魚の煮付けにしようと、作業中にも話が弾んだ。
 一方、父の滋は外に出て、玄関前をせっせと掃除した。
 












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背景:月の歯車
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