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道しるべ
175 宴も大成功
領主は、披露宴まで残ろうとはしなかった。 だから夫人のウィニフレッドも出席できず、名残惜しそうに振り返りながら、馬車に揺られて館に帰っていった。
なぜかゴードン夫妻は残った。 いつもモードの面倒を見てもらっているのに少しは感謝したのかもしれないし、ただ若い連中に混じって楽しみたかっただけかもしれない。 ともかく、カー伯爵の嫡子が庶子の主催した行事に出席して、共に祝ったのは初めての事態で、他の招待客たちの密かな注目の的になった。
もう一人の半兄弟ヴィクターが鼻も引っ掛けなかったから、なおさら彼の兄の出席は目立った。 ヴィクターは結婚式を完全に無視したばかりか、ただの騎士を選んだジョニーを大っぴらにバカ呼ばわりして回っていた。
天気がよかったので、イアンはテーブルを外に運び出させ、広い庭での宴会にした。
その試みは大成功だった。 おかげで賓客から雇い人まで同じ空間で祝うことができ、余興の種類も広がって、笑いが絶え間なく響いた。
踊りも難しい宮廷舞踊は少しにして、イアンが幼いときから親しんだ地元のダンスを増やした。 それでちょっとした村祭りの雰囲気になり、騎士や見習も、いつも気取っている侍女たちも、近所の若者たちと手を取り合って踊った。
宴は予定を越えて続き、暗くなってようやくお開きとなった。
「いい式だったわね」
ようやく重い衣装を脱ぎ、薄い夜着に替えてホッとした雰囲気で、ジョニーは寝台近くの椅子に座りこんだ。
少し酔っていて、顔には緊張のとけた微笑がただよっている。
イアンもぴっちりした上着を取って衣装箱の上に投げ、半ズボンの紐ほどきに取りかかった。
「そうだな。 天気にも恵まれたし」
「途中で料理が足りなくなりそうだったの、知ってる? 急いで作り足してもらったの」
イアンは服を脱ぐ手を止めた。
「やっぱりそうか。 あんなにたくさん来るとは思わなかったもんな」
ジョニーは立ち上がって、イアンの片腕を抱いた。
「あなたの人気よ。 伯爵領の主だった人たちはほとんど来たんじゃない? こんなに好かれてる人をお婿さんにできて、私も鼻が高いわ」
イアンの口元が苦笑に歪んだ。
「友人は三分の一、後は好奇心からか、祭り好きな連中だよ」
「冷めてるのね」
ちょっと寂しげに、ジョニーは呟いた。
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