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道しるべ  171 父との比較


 再会のとき、伯爵が舞踏会で庇ってくれたことを、ジョニーは指摘した。
「王様は長旅で疲れていて機嫌が悪かったの。 放っておいたら、お気に入りの踊りを邪魔したあなたに罰を下したかもしれなかったわ」
「俺だから庇ったわけじゃない」
と、イアンは苦く呟いた。
「伯爵は事なかれ主義なんだ。 部下のあやまちで自分が責められるのが嫌だっただけだ」
「その後、叱られた?」
 イアンは唇を噛んだ。
「……いや。 おれにはほとんど口をきかないんだ。 息子たちも引き離しているし」
「そう」
 ジョニーはしばらく考え込んだ。 その間、一同は無言になり、時折り風で枝がそよぐ音と、飛び交う鳥の鳴き声だけが耳に聞こえた。
 やがて、言葉を選びながら、ジョニーが語りかけた。
「私は何度か伯爵とお話したわ。 頭が切れてユーモアもあって、とても魅力的な方よ」
 突然、イアンは実の父への嫉妬で胸が破裂しそうになった。 自然に声が荒くなった。
「女にはそうなんだろう! 赤ん坊でも娘はかわいがってるらしいからな」
 苦く叫んでから、イアンは自分が嫌になった。 この言い方じゃ、まるで妹を妬んでいるみたいじゃないか。
 すぐにジョニーが馬を寄せてきて、手を伸ばして彼の腕に触れた。
「あなたによく似てると言いたかったの。 嬉しくないかもしれないけれど、あなたは伯爵のいいところを全て受け継いで、それ以上のものを持っているわ」
 気を遣わなくていいんだ、と思いながらも、イアンはその言葉と、温かい手の感触に慰められた。
「見かけがどんどん似てくるだけで腹立たしいんだが」
 腕に載った手がイアンの頬に移り、柔らかく撫でた。
「あなたのほうが、ずっと頼もしいわ」
 その声には、真実の響きがあった。


 屋敷に戻った婚約者たちは、大歓迎を受けた。 今度は途中で一行を見かけた小作人の一部まで寄り集まって、お家柄で持参金つきで、その上に気立てまで良いという未来の奥方に、敬意を表そうと並んでいた。
 ジョニーは新しく会った人々に等しく笑いかけ、使用人たちにはすべて名前を呼んで挨拶した。 一度で覚えてもらえたと知って、彼らはいやが上にも張り切った。
 トムは戸口に寄りかかり、大きな笑顔で二人を迎えた。
「うまくいったみたいだな」
「まあ何とか」
 三人は陽気に話しながら中へ入り、仏頂面のユージェニーが少し遅れて後に続いた。












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