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道しるべ
126 友との再会
目が合うと、二人は同時に笑顔をはじけさせ、勢いよく腕をぶつけるようにして、がっちり組み合わせた。
「無事帰ってきたんだな!」
「どこかで鴉の餌になっていればよかったか?」
「いや、しかし女の餌食になるかもしれないとは思った。 フランス女はコケティッシュだというからな」
からみ合ったイアンの腕がギュッと強ばるのを、ローアンは感じ取り、軽く眉をひそめた。
「どうした? ただの冗談だよ」
「わかってる」
イアンは力を抜き、腕を離して窓に近づいた。
ローアンも後を追って並び、窓の下で男たちが材木を盛んに運んでいるのを眺めた。
「あれは騎馬試合用のやぐらを組む材料だ。 サイモン様は部下を失わずにすんでご機嫌で、おまえだけでなくデイヴィーとおれも騎士にしてくださるそうだ。 授与式の祝いに騎馬戦をすることが、既に決まっているんだ」
それを聞いてイアンは喜び、ローアンに肩をぶつけた。
「おいおい、戦に出なかったおまえにもか?」
ローアンはむきになって、肩をぶつけ返した。
「残念ながら留守番を申し付けられたが、訓練は怠らなかったし、野盗退治もやったんだぞ。 スコットランドとのいざこざで落ち武者になった国境付近の連中が、こっちまでやってくるようになったんだ」
「国王がフランスに進軍している隙を狙ったんだな」
イアンは顔をしかめた。 領土争いが起きているのはフランスとの間だけではなく、スコットランドとも長年に渡って紛争が続いていた。
「このワイツヴィルでは余力があるから、すぐ撃退できた。 だが、隣のグランフォートは手こずって、こっちから援軍を出した。 レディ・モードがゴードン様と婚約していて、向こうは得をしたわけだ」
そこで言葉を切って、ローアンは声を低めた。
「それはそうと、トムとはまだ仲良くしてるのか?」
意外な問いに、イアンは眉を吊り上げた。
「当たり前だ。 それがどうかしたか?」
「いや……」
ローアンは具合悪そうに咳払いした。
「まあ、べったりくっついていても、相手がおまえだから悪く言われることはないんだが」
「おい、何の話だ?」
トムのこととなると、イアンは冷静ではいられなくなる。 彼が怒り出しそうなので、ローアンの声はいっそう低くなった。
「カッカするなよ、戻ったばかりで疲れているのはわかるが。 一部で噂になってるんだよ。 トムがあっさりしすぎてるせいで。
つまり、女じゃなくて別のほうが好きなんじゃないかって」
そんなことは想像もできなかった。
イアンはポカンとして、ローアンをまじまじと見つめた。
「バカかおまえ」
「おれが言ってるんじゃないよ。 間違えるな」
ローアンは荒い鼻息をつき、説明を始めた。
「ここの小姓たちは、ちょっと神経質になってるんだ。 つまり、ゴーディーがそうだから」
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