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道しるべ
100 謎の宝とは
思ってもみなかった隠し財産に、二人の若者は放心状態になって、少しの間、列をなした沢山の樽を、ただぼうっと見つめていた。
やがて我に返った二人は、トムが樽の数をせっせと数え、イアンのほうはこれをどう処理すべきか頭を痛めた。
「まず、どうやって持ち出すかだな」
「運び込んだのは、あの坂道からかもしれないが、出すには別の通路があるはずだ」
トムが確信を持って言い切り、松明を上げて、びっしり並んだ樽の奥を照らした。
出口は普通の木戸で、両開きになっていた。 鍵も何もかかっていない。 倉そのものが隠されているので、扉を厳重にする必要がないと思ったのだろう。
「おれが入ってみる」
人が二人並んで歩ける幅のある通路に、イアンは用心しながら足を踏み入れた。
中の壁は岩板で固めてあり、天井はアーチ型に掘って木材で支えられていた。 イアンはすぐ地表に出られるだろうと思ったが、トンネルは意外に長く、二分ほど歩くことになった。
幸い、枝分かれはなかった。 一本道をたどっていくと、やがて地下道はゆるやかな上り坂になり、突き当りで低くなった天井部に木製の跳ね戸がついているのがわかった。
下から腕で押し上げると、戸は簡単に持ち上がって、外気がどっと入り込んできた。 落日後のくすんだ色に変わった空が、葉を落とした樹木の枝の間から覗いていた。
次の瞬間、ワッという小声の悲鳴が聞こえた。
イアンは体を張り詰め、剣の束に手をかけて、穴から躍り出た。 通路の秘密を知った目撃者は、ただではおかない……
剣を引き抜き、するどい目で見回したイアンの前に、ロバがいた。 三頭固まって、口をもぐもぐさせながらイアンを見返している。 おびえた気配がないのは、お互い顔見知りで苦楽を共にしたせいだった。
ロバの背後から、小さな姿がよろよろと立ち上がった。
「イアン!」
「なんと!」
二人は同時に驚きの声を上げた。 そこにいたのは、間違いなくジョニーと、彼らが買ったロバたちだった。
秘密倉庫からの抜け道は、道をへだてた小さな林の中に通じていたのだ。 ここなら人目に触れずに荷を運んで、こっそり出し入れできる。 どうやらルドン家の主人は、長期にわたっていかがわしい闇商売をしていたらしかった。
イアンはさっそくジョニーに事情を説明した。 ジョニーは跳ね上げ扉の横に座りこんで中を見てから、イアンに耳打ちした。
「四年ぐらい前に、王様が塩に税金をかけたの。 塩は王様の倉庫に入れて、そこから売ることになっているのよ」
「なるほど。 ルドンって奴は税金逃れで、地下に貯めこんでたんだな」
逃げ出すときに持っていけなかったわけだ。 イアンは納得した。
「じゃ、もともと不正な手段で手に入れた塩だ。 盗んでも心は痛まない」
ニッと笑ったイアンに、ジョニーも仄かな笑顔を返した。
「すごい物を見つけちゃったけど、これからどうする?」
ジョニーが尋ねた。 イアンは抜いた剣を腰に戻しながら考えた。
「そうだな。 まず見張りの番人を追い払おう」
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