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道しるべ  67 やっと休憩



 軽い鎧を着た装甲兵の一部は、長弓隊に間近い後ろを歩いていた。
 だが立派な騎士たちは、一マイルほど離れた後方から、軍馬に乗って悠々と進んだ。 従者や見習、小姓などはその背後に、そして商人や兵隊目当ての女たちは、最後尾から追っていった。
 つまり、今度のように万を越す大軍が移動するとなると、隊列は河の流れのように延々と続く。 ところどころ途切れながら進軍していく姿は、いやでも周囲の人目についた。


 町からある程度離れると、先頭には再び旗がひるがえった。 今度は、知らない土地を移動するときの目印とし、異国での心の支えにもなるためだ。
 先導に従って、兵士たちは淡々と歩いた。 太陽は空高く上ったが、司令部に呼ばれたイアンは、まだ追いついてこない。 ジョニーはなんとか並んで歩を運んでいるが、疲れがはっきりと出て膝が上がらなくなってきており、小さな土くれにつまずくことが多くなった。
 それでもジョニーは弱音を吐かなかった。 内股でひ弱に歩くこともない。 トムは内心、彼女のねばり強さに驚いていた。


 やがて、伝令が後ろから馬を飛ばしてやってきた。 ようやく昼休みが許されたのだ。
 兵士たちはほっとして、どやどやと近くの野原に入り込んだ。 すぐ火が熾〔おこ〕され、食事の支度が始まった。
 同時に、元気な若者が数十人、探索に出かけた。 獲物がいれば弓で捕り、なければ農家に押し入って食料を奪い取る。 それが当時のやり方で、道筋に住む農民にとって軍隊は、どちらの側でも呪いの的だった。


 徴発隊が戻ってくるまで、残りの人々は林を風除けにして、野原のあちこちに固まって休息を取った。 幸い、風の少ない日だったため、焚き火とマントがあれば凍えるようなことはなかった。
 一方、下働きは林へ入って、薪になる倒木や枯れ枝を探す役目があった。 ジョニーは疲れきっていたが、それでもけなげに野原を横切り、落ちている小枝を拾い集めた。
 トムは最初、火おこしを手伝った。 それから、人々が焚き火を囲んで談笑し出すと、さりげなく林のほうに向かい、枝を求めて中に入っていったジョニーの後を追った。


 彼女がどこにいるかは、姿が見えなくてもすぐわかった。 なぜかというと、集めた枝を少しずつまとめて、幹にからまるツタの茎で縛り、点々と置いてあったからだ。
 なるほど、こうしておけば重い束を持ち歩かなくてすむし、森から出るときに拾ってくれば道に迷うこともない。 あの子はなかなか頭がいい。 トムはますますジョニーに感心した。












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