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道しるべ
46 大陸に到着
武器、手荷物、馬、それに兵士たちを船に乗せるため、更に半日かかった。
怒鳴り声と共に次々ともやい綱が解かれ、船群は河口に近い順に続々と出航した。 船員は、もともと乗り込んでいた商社の者を使ったが、荷揚げ作業などの力仕事は、経費節約のため、ほとんど兵士が受け持った。
それからの三日間は、軍勢の半ばにとって、二度と思い出したくないし繰り返したくもない辛い経験になった。
帆が一枚のずんぐりした船は、北海の荒波に揉まれて前後左右に揺れた。 おかげで船酔いになる者が続出し、強風のときは甲板をぐるりと取り巻いて嘔吐するという情けないありさまとなった。
ただし、船旅も四日目となると、ほとんどは不規則な揺れにも体が慣れてきて、地上と同じように動けるようになった。 食欲も戻ってきた。
船は北岸にある港のいくつかに立ち寄り、水や食料、それに巷の情報を手に入れた。
噂によると、他の軍もカレーに向けて出発しているとのことだった。 陸路を採った軍は、概して評判が悪かった。 兵士が酔っ払って騒ぐし、通った町に落としていく金より盗んでいく物のほうが多かったからだ。
こうして海上を約二百六十マイル(≒四百二十キロ)船に揺られた後、一行はようやくドーヴァー海峡を渡り、フランス北岸の港町カレーに到着した。
あれやこれやで二週間近くかかる苦しい船旅だった。
上陸すると、港は既に集結した兵士たちでごった返していた。 酒場と食べ物屋は軒並み大繁盛で、いろんな地方の方言が街路を飛び交っている。 辺りは騒がしく、港の外では早くも野営地の取り合いが始まっていた。
狭い海峡を一つ渡っただけなのに、その日のカレーは明るい晴れで、青空に丸い雲がタンポポの種のように浮かんでいた。 冬は灰色の雲が垂れ込めるイングランドとは、空の高さからして違う。 風はさすがに冷たかったが、体一杯にそそぐ日光の中、イアンはクイントに呼ばれて、通訳として彼についていった。
その間、トム達は長い船旅を共にしてきた軍馬の下船を手伝い、他の荷降ろしにも参加した。
それから点呼を受け、一同がしばらく世話になる予定のモンモランシー男爵邸宅の庭に連れていかれた。 男爵は故イザベル・カーの従弟で、英国軍側について自分も出陣する予定だった。
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