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道しるべ
20 月日は過ぎ
すぐに二人の少年は、息を合わせて行動することを覚えた。
性格が強くて頭が鋭いイアンと、おっとりして思慮深いトムとは、似たもの同士ではなく、お互い補い合う関係になった。 騎士見習のイアンに対し、トムはただの雑兵〔ぞうひょう〕にすぎなかったが、イアンは少しでも手が空くと、新米のトムの様子を見に行った。 そして、冗談を飛ばし、時には毒舌を交えながら、トムが早く環境に慣れる手助けをして、この館からも逃げ出さないように気を配った。
やがて一ヶ月が過ぎる頃、トムはイアンにとって、初めてできた本当の友達となっていた。
平和な年月が、しばらく続いた。
トムが来た年から三年間は気候にも恵まれ、豊作の中で人々は収穫祭を華々しく行なった。
金色にうねる麦と同じく、少年たちも栄養に恵まれて、大きく育った。 虹色に輝くイアンの髪は、直射日光にさらされて褪せ、淡い蜜の色に近くなった。 その髪を、彼は無造作に肩まで伸ばしている。 一般的なのは、耳の下で丸く刈る短めの髪型だが、イアンは流行には無頓着だった。
別の意味で、トムも髪を切りたがらなかった。 坊さん刈りに似ているからだ。 彼はイアンより更に長めに整え、紐できっちりと一つに縛って、邪魔にならないようにしていた。
背丈は、二人が初めて出会った頃と比べて、どちらも頭一つ分は伸びた。 イアンは剣や槍などの武術で鍛えているし、トムも長弓隊の一員として、驚くほど腕を上げたから、どちらも筋肉がしっかりついた見事な体型になっている。 年も既に十七と十八。 当時ではもう大人扱いだった。
同じように青春を迎えた若人が、もう一人いた。
こちらは、逞しいとはいえない。 そんなことを言っても誉め言葉にはならない。 つややかなサテンのような髪とか、朝露に揺れる白薔薇のごとき顔〔かんばせ〕とか、優美な容姿を称える詩が、彼女の元に山を成していた。
モードはそのような恋文や詩片を、すべてにこやかに受け取った。 ただし一通も返事は書かず、特にお気に入りを選んだという噂も流れてこなかった。
彼女はただ、次々と服を新調して、真夏の蝶のように軽やかに遊び歩いていた。
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