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道しるべ  13 父親の問題


 こうして、イアンはサイモン・カーの館に住み込むことになった。
 母も一足先に来ているはずだが、クリントに聞いてもはぐらかされるし、クリントの部下達も口は堅かった。 それに母本人の姿は、館のどこにもまったく見かけられなかった。


 イアン自身の新しい生活は、それほど辛くはなかった。
 人の集まりは、上に立つ者で雰囲気が決まる。 厳しいが頑固ではなく、豪快でユーモアのあるクリントは、部下を上手にまとめていた。 特にイアンをひいきすることもなかったので、少年は部隊の連中に、普通の新入りとしてすんなり受け入れられた。
 半月もすると、イアンは隊に溶け込んでいた。 館の端に建てられた兵舎の隅に寝床を与えられ、主にクリントの、たまには他の兵士の走り使いをしながら、武具の手入れや組み立て方、使い方の初歩などを習い覚えた。
 たまには、伯爵の正式な息子たち、ゴードンとヴィクターの姿を見かけることがあった。 二人は上質な亜麻のシャツに刺繍付きのジャケットをまとい、なめし革のブーツを履いていた。 背後には常にお付きがついて回っていたが、これは護衛というより、二人が危険な遊びをしないよう見張っている感じだった。
 正式な息子たちは、騎士や兵士が訓練している中庭には、決して来なかった。 父親から禁じられているのかもしれない。
 また、イアンのほうも二人に近づかなかった。 遠くからお互いの姿を見ることはあったが、視線が重なると、にらみ合うことはせず、すぐ他の方角に向けた。




 北国の短い夏は駆け足で過ぎた。
 秋の初めは天候が不順で、にわか雨が多かった。 にもかかわらず、領主のサイモンは始終外出した。 部下達を伴って出かけることもあれば、わずかな供だけ引き連れて行くこともあり、そのときは必ず外泊した。
 母の元へ行くのだろう、と、イアンは察していた。 もともとサイモンは、まだ十代の頃、母の侍女だったウィニフレッドに惚れこんで追い続け、半年かけてようやく望みを叶えたと噂されていた。
 それでもサイモンは、恋人を護り通せなかった。 父親の言いつけ通りに国を離れ、別の女と結婚して、というより押しかけ女房にがっちり捕まって戻ってきた。
 そしてこの十一年間、まったくウィニフレッドとイアンを放りっぱなしにしていた。













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