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エドムントに報告を終えて、騎士の宿舎に帰りついたロタールは、さすがに疲れていた。 ビロードの帽子を取って部屋の隅に投げ飛ばすと、彼はベッドの上へ大の字に転がった。
皮のブーツを、従者のアロイスがうんうん言いながら足から抜き取った。
「土埃がこんなについて、固まってますよ、旦那。 だからお供するとあんなに言ったのに」
「強行軍だったからな。 連れて行って、おまえに小言を言われたくなかった」
のんびりと腕を曲げて枕にし、目を閉じて、ロタールは満足げに溜め息を漏らした。
「こんな殺風景な部屋でも、ゆったりできるのは良いもんだ。 向こうのベッドは粗末で固くてな」
危うく修道院と言いそうになって、ロタールはひやっとした。 元は居酒屋の使い走りをしていたアロイスは、目はしが効いて役に立つ従者だが、少し口が軽い。 傍にいるとき、うっかりしたことはしゃべれなかった。
食欲より何より疲れがひどく、ロタールは三時間ほど泥のように寝込んだ。
それから、だいぶすっきりした気分で起き上がり、食料を調達してくるようアロイスに頼んだ。
「ソーセージがミートパイ、それに中級品のワインがほしい」
「わかりやした。 パンは白で?」
「いや、黒パンでもかまわん」
そう言ったとたん、腹がグウッと鳴った。 ロタールは笑って、従者に銀貨を一ひねりして投げた。
「急げ!」
「へい」
アロイスが駆け出していった数分後、扉が開いてディルクが入ってきた。
「話はついたか?」
ロタールは立ち上がって、まだ腰に下げたままだった剣を外し、小机に置いた。
「ああ、うまく片付いた。 おまえ達のほうも手早くやったな」
そう言いながら、ロタールはさりげなく窓に近付き、鎧戸を閉じた。
「彼女が来ているとクルトから聞いたときは、驚いたよ。 殺されかかったんだって?」
小声で尋ねられて、ディルクは表情を引き締めた。
「そうだ。 犯人がカウニッツ近くで捕まったという噂が流れている。 間もなく護送されてくるだろう」
「依頼主を白状するかな」
「たぶんエドムント様と言うだろう。 十クラウン賭けてもいい」
そこで大きく息をつくと、ディルクは思い切って言った。
「彼女のところへ行っていいか?」
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