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やがて戻ってきた若い侍女たちは、マリアンネが無事で部屋にいたので、ほっとした表情で取り囲んだ。 彼女たちの役目が本当は何であるにしろ、マリアンネに好意を持っているのは確かなようだった。
その気持ちを上手く利用することにして、マリアンネは頼んだ。
「ヨアヒム・フォン・メーベルト殿のことを知っているわね?」
少女たちは顔を見合わせ、困ったような微笑を取り交わした。
「はい」
「少し話したことはあります」
「じゃ、彼が追いはぎなんかしないのがわかるでしょう?」
「ええ、おそらく」
マリアンネは元気付いた。
「嬉しいわ。 それでは相談があるの。 ヨアヒムがどこで、どんなふうに捕えられたか、うまく調べてもらえないかしら。 他にも、彼がどう思われているかとか、牢でちゃんと扱われているかなど、どんな小さな情報でも助かるわ」
「やってみます!」
普段はおとなしいイーナが、珍しく顔を紅潮させて名乗り出た。 奥方の部屋で雑用をしているより、城内を歩き回って自由に行動できるほうが嬉しいにちがいない。
すぐにダグマーとグレーテも続いた。 アガーテも、仲良しの料理番にそれとなく訊いてみると約束した。
夕方、マリアンネがアガーテと二人きりでタペストリーの刺繍をしていると、出かける支度をしたロタールが上がってきた。
「では、リーツ城に戻って事情を確かめてきます。 明日の夕刻には戻れると思います」
「よろしくお願いね」
「かしこまりました」
近付いて、差し出されたマリアンネの手を取り、深く一礼した隙に、ロタールは小さく丸めた紙を素早く指の間に押し込んでから、離れた。
「それでは行って参ります」
マリアンネは、渡された紙をわからないように袖口に押し込んだ。 そして、間もなくアガーテが用足しに立った時間を利用して取り出し、中身を読んだ。
『夕食の後、礼拝堂の裏で待つ。 D』
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