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表紙

緑の騎士 -67-
 これ以上長く姿を消していると、侍女たちに怪しまれる。 マリアンネは、翌日の朝ロタールに、もっとも近い大規模修道院の聖ゲルハルト修道院へ行ってもらうことにして、三階の階段下で別れた。


 部屋へ戻ると、案の定アガーテがおろおろしていた。
 マリアンネがマントのフードを背中にはねのけて中へ入ったとたん、アガーテはすがりついてきた。
「どこへ行ってらしてたんですか! 心配しましたよ」
「ヨアヒムのことで、あちこち飛び回っていたの」
 マリアンネは、曖昧〔あいまい〕にごまかした。
「彼が緑の騎士だなんて、冗談じゃないわ。 故郷の家が心配で、ブライデンバッハへ家族の顔を見に帰っただけでしょうに」
「奥方様の側近を捕まえて、足を引っ張ろうとする陰謀ですよ、きっと」
 アガーテは憎らしそうに言い、マリアンネの袖をしっかり掴んだ。
「今度文句を言いにいらっしゃる時には、私も連れていってください。 少しは役に立ちますよ」
「そうね」
 上の空で答えながら、マリアンネは胸の奥で考えていた。
――アガーテは、ヤーコブ様の忠実な部下だ。 最初から私をマリア姫とすりかえる手伝いをしていた。
 となると、他の侍女たちも信用できない。 四人に怪しまれないよう単独行動するには、どうしたらいいだろう――
 そういえば、部屋にはアガーテだけで、他の三人は姿を見せない。 不思議に思って、マリアンネは尋ねた。
「ダグマー達は?」
 たちまちアガーテは口を尖らせた。
「奥方様探しに出ています!」
「まだよく知らない城の中を? 若い娘なのに、危険だわ」
「いいえ、あの子たちは結構しっかりしてますよ。 それに、ダグマーとイーナには、もう守ってくれる殿方がいるようだし」
 それを聞いたとたん、マリアンネはいいことを思いついた。
「相手は、この城の兵士たち?」
「そうみたいですよ」
「じゃ、彼らの口から、どうしてヨアヒムが捕まることになったのか、事情を聞きだせるわね」
「ええ、たぶん」
 マリアンネはすっかり夢中になった。 侍女たちに調べさせれば、城内の体制がわかるし、彼女達を遠ざけることもできる。 一石二鳥だ!








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