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表紙

緑の騎士 -61-
 どう説得するか、マリアンネは二人に説明した。 男達は何度も首をかしげたが、まあ駄目でも、捕らえられているヨアヒムに実害はないだろうということで、しぶしぶ賛成した。
「相手はしたたかだし、君を毒殺しようとした女だ。 俺がついていくよ」
 ベッドに半身を起こしたディルクが、剣を取ろうとした。 その手を、マリアンネが急いで押さえた。
「あなたはできるだけ私から離れていて。 まだ弱っているし、寄り添っているところを見られたら危険だわ」
 万感の思いを込めて、マリアンネは鍛え抜かれたディルクの腕を、優しく撫でた。
「あなたが傷つくのはたまらない。 もし死んだりしたら、私も後を追うわよ。
 だから今は、力が戻るまでここで休んでいて。 お願い」
 男の腕が、強くマリアンネを引き寄せた。 束の間、火のような口づけが唇を覆った。
「それは、俺の台詞だ。 君を巻き込みたくなかった!」
「巻き込んだのはヤーコブ様よ。 もう後へは引けない」
 そっとキスを返すと、離れたくない気持ちを懸命に押さえて、マリアンネは身を起こした。


 その後すぐ、マリアンネは再びマントをすっぽりと被り、ロタールに守られて宿舎を出た。
 城に戻ったところで、ロタールは大広間近くの柱の陰にマリアンネを隠し、小姓のベルントを探しに行った。 あの小生意気な金髪の少年なら、フォン・グロート夫人の居場所を知っていそうだったからだ。


 マリアンネが柱に寄りかかり、何をどう言うべきか必死で考えをまとめているところへ、ロタールが首尾よくベルントを連れてきた。 意外に短い時間で見つかったらしい。
 マリアンネが深いフードを背中に下ろして顔を見せると、少年は青い眼をきらめかせて見つめ、丁寧に一礼した。
「奥方様。 御用を承ります」
「アデライーデ・フォン・グロート夫人にお会いしたいの」
 マリアンネは一気に言った。
「とても大事なことですからとお伝えして」
「奥方様のお部屋に呼ばれるのでしょうか?」
「いえ、私が出向きます。 内密な話なの」
 ベルントの目が、ロタールに向けられた。
「騎士殿もご一緒ですか?」
「できれば夫人と二人だけで話したいのです」
「かしこまりました。 ではこちらへ」
 夫人本人の了解を取らなくていいのだろうか。 マリアンネは少し戸惑ったが、少年が静かに歩き出したため、黙ってついていった。
 間をあけて、ロタールもその後に従った。








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