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あれから六年以上の時が過ぎた。 生々しくうずいていた傷が、ようやく癒される日が来たのかもしれない。 だからこそ、はっきりと思い出す勇気が持てたのかも。
ぼんやりと、マリアンネはガラスに手を当てた。 現実の夫であるエドムントと、暗闇の恋人、緑の騎士。 不思議なことに、マリアンネは両方が自分を守っているような気がしてならなかった。 この奇妙な安心感がどこから出るのか、まるでわからないし、理解も出来ないのだが。
昼に運ばれてきた食事は、鴨肉のソテーとスグリのジャム、固焼きの塩パンに土地のワインだった。
正式な場ではないので、マリアンネは侍女たちと共に味わった。 同じ物を分け合っているから、毒が入っていれば全員が死ぬ。 厨房には、奥方が寛大で料理を分け与えていると前もって伝えてあった。 そのためか、これまでのところは何の仕掛けもされなかった。
銀の盃に口をつけたとき、アデライーデの冷たい顔立ちが頭をかすめた。 エドムントが外出している今、アデライーデはどこで何をしているのだろう。 まだエドムントの寝室にいるのか。 それとも自分の部屋に戻って、愛人の帰りを一刻千秋の思いで待ち続けているのか。
食べ終わって、侍従が食器を下げた後、裏庭が急に騒がしくなったのに気付いて、アガーテが丈長の窓に寄った。
「どうしたの?」
何気なくマリアンネが尋ねると、アガーテは少し窓を開き、頭を出して下の物音を聞き取ろうとした。
「なんだか争っている雰囲気ですね。 ええと、二手に分かれて……いえ、そうじゃありませんね、罵りあっているようです」
やがて、アガーテの額に困惑した時の横皺が浮かんだ。
「誰かが捕まって、引き立てられてきたらしいですね」
若い侍女のイーナとダグマーも、糸に引かれるように立ち上がって、窓から見下ろした。
耳を澄ませていたイーナが、可愛い口元をすぼろるようにして息を吸い、小声で報告した。
「まあ大変! 緑の騎士が、とうとう捕まったんですって! 国境の近くで」
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