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表紙

緑の騎士 -36-
 帰り道は一リーグ(≒五キロ)以上で、話し合う時間はたっぷりあった。
 マリアンネは、ためらう気持ちをなんとか克服して、飲み物に毒が入っていたことを打ち明けた。 男達は一様にびっくりした様子だった。
「なんだそれは? 披露宴の最中に花嫁を殺す〜? 最悪のやり方で戦争をしかけているようなもんじゃないか!」
 ヨアヒムがいきまいた。
 一方、ロタールは密に生え揃った長い睫毛を伏せ、見事な青い眼を陰にして考えこんだ。
 やがて彼は、不審そうに呟いた。
「なぜ金の盃なんだ?」
「銀だと一発でばれるからだろう」
 後ろからディルクの淡々とした声が聞こえた。 そっちに顔を上げて、ロタールは口を尖らせた。
「それは誰にでもわかる。 俺が言いたかったのは、わざわざ花嫁の分だけ金盃にしたら目立ちすぎて怪しまれるってことさ」
「確かにな。 だからマ……お妃がすぐ用心したんだし」
「だいたい、夫のくせになぜ忍んできたんだ? ギュンツブルクの奴らは低脳な上にゴキブリなのか?」
 ヨアヒムが意地悪そうに言ったので、男達は一斉に笑った。


 状況を確認した後、四人はじっくり相談して、話をでっちあげた。
 野盗二人が、披露宴の人込みに紛れて城に潜入した。 めぼしい獲物を求めて暗い部屋に入り、たまたま来た領主を殴って倒したあげく、行きがけの駄賃に花嫁と馬を盗んで逃げた。
 宴会に泥棒はつきものだから、これで何とかなるだろうということになった。


 自分の将来がかかっているのに、マリアンネはなかなか話に集中できず、ぼんやりしていた。 城が近くなるにつれて、焦りと諦めが交互に胸を占め、終いにはうなだれるほど落ち込んだ。
 ロタールが、手綱を取る両腕で挟むようにして、軽くマリアンネを揺らした。
「寝ちゃだめだ。 落馬するよ」
 姿勢を立て直し、マリアンネは小声を出した。
「寝てないわ。 考えてたの。 ね、ロタール、夫をベッドに近づけない方法があるって本当?」
 ロタールは、すぐに答えた。
「あるよ、この場合は」










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