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結局、どんな目に遭ったかはっきり説明できないまま、マリアンネは三人の護衛に連れられて、うっそうと茂った木立を抜け、表の道に出た。
ロタールが工夫して、彼女のマントを前から後ろに巻き、その上に自分の刺繍つきのマントをかぶせてくれた。
「ほら、こうすれば、少々のでこぼこ道でも前がはだけたりしないですむ」
「ありがとう」
優しくてよく気のつくロタールが護衛に入ってくれて、本当によかった、とマリアンネは思った。
一方、ディルクとヨアヒムは、空き地まで連れてきた馬に野盗二人の死体をかつぎ上げると、しっかりくくりつけ、後から引いてきた。
マリアンネに追いつくと、ディルクが死体から抜いた短剣を渡してくれた。 一方、ヨアヒムは眉間に皺を寄せ、しきりに考え込んでいた。 このこじれた事態を何とかしのぎ、できればこっちに有利に持っていきたいと策を練っている風だった。
道の手前で木に繋がれているのは、三頭の馬だった。 護衛三人の乗ってきたものだ。 マリアンネが盗んできた馬のうち一頭は、昨夜のうちにいなくなった。 おそらく、緑の騎士が連れていったのだろう。 理由はよくわからないが。
自然のなりゆきで、マリアンネはロタールと相乗りすることになった。 先頭をヨアヒムが進み、しんがりはディルクが野盗を積んだ馬を連れてついてきた。
ロタールは、マリアンネを庇うように前へ座らせていた。 心地よいリズムで馬に揺られながら、マリアンネはそっと彼に尋ねた。
「私がこの道を来たと、どうしてわかったの?」
ロタールの代わりに、前を行くヨアヒムが、半分だけ振り向いて不機嫌そうに答えた。
「わかるさ。 君が自分で逃げたと気付いたから。 馬は二頭消えているのに鞍は一つなんだからな。
ほら、君は年中言ってたじゃないか。 サント・マルガレーテ修道院へ入りたいって」
ああ、だからこっちの方角へ探しに来たのか。 マリアンネは納得した。 だが、同時に疑問が湧いた。
必ず君を助ける、と緑の騎士は言い残した。 彼はこの三人と関係があるのか、それともないのか?
もし、何のゆかりもなくて、愛しい人とすれ違いになったのだったら……。 そう思い当たったとたん、マリアンネはたまらなくなり、馬の上で伸びあがって振り向いた。
マリアンネの視線が道の彼方を捜し求めているのを見て、ディルクがそっけなく尋ねた。
「忘れ物?」
「ちがうけど」
マリアンネは呟いた。
「とても大切なものを失った気がするの」
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