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ダンスが終わり、人々は笑いさざめきながら席に戻った。
エドムントは、マリアンネに付き添って上席まで送ると、坐らずに去って行った。 チャンスだ! と思ったマリアンネは、だいぶ離れた下座に追いやられているヨアヒム達に合図を送ろうとした。
ところが、ディルクは隣りでちょっかいをかけるヨランデにうんざりしたらしく、更に下手〔しもて〕に移動しているし、ロタールは人の良さが災いして、耳の遠いノイラート司祭の説明役を引き受けさせられていた。 しかも、ヨアヒムときたら、銀貨をテーブルに積み上げて後ろ向きになって、誰が一番早くワインの一気飲みできるかという賭けをやっていた!
肝心なときに役立たない。 マリアンネは頭を抱えたくなった。
そこへ、整った顔立ちの小姓が近付いてきて、丁重に呼びかけた。
「奥方様、お寝間へ案内させていただきます」
マリアンネは弱々しく頷き、衣擦れの音をさせながら立ち上がった。 すぐに別のテーブルにいたアガーテが気付いて、三人の侍女をせき立ててついてきてくれたので、少しは動揺が鎮まった。
侍従の掲げる三本枝の燭台が、石造りの廊下と階段に黄金色の光を投げた。 大広間は賑やかだが、他は森閑としている。 太い柱の陰から幾つもの目が様子を窺っているように感じられて、暗赤色の地に金糸で小鳥模様を織り込んだマントを、マリアンネは体に強く巻きつけた。
歩を運びながら、一度アガーテに囁こうとしたが、アガーテは小さく顔をしかめて首を振り、目で小姓を指し示した。
寝室へ入ってしまえば、内緒話ができる。 それまで待とう。 マリアンネはもう少し我慢することにした。
しかし、敵もさるものだった。 三階の右翼にある立派な鋲付き扉まで案内してきた小姓は、そこで立ち止まると、アガーテ達に言った。
「奥方様のお着替えが済みましたら、お供の方々には退出していただきます」
「えっ?」
アガーテは目をむいた。 他の三人もてんでに顔を見合わせ、不満そうに口を尖らせた。
「なぜです? 我々はどこまでもマリア様とご一緒にと、ヤーコブ様にきつく言われていますのに」
「エドムント様のご命令ですから、従っていただきます」
四人の女性に詰め寄られてたじたじとなりながらも、小姓は頑固に言い張った。
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