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マリアンネの胸が、激しくうずいた。
それでは、この人も独りぼっち。 庇ってくれる親兄弟も、本気で心配してくれる人もいないんだ……。
衝動的に手が伸びた。 髪にやさしく触れられて、男は驚いて動きを止めた。
「どうした?」
マリアンネは我に返った。 子供のように頭を撫でたくなったとは言いにくい。 別の言葉にすりかえた。
「ふさふさした見事な髪の毛ね。 さっき灯りが当たったときには、先が金色に見えたけど」
「日に焼けて毛先の色が褪せたんだ。 本当は茶色だ」
気がつくと、男の顔が間近に来ていた。 息が交じり合うほど、すぐ近くに。
彼がキスしたがっていることを、マリアンネは悟った。 だが強引に奪うことはしない。 ためらい、マリアンネの出方を待っている。
その心遣いが、マリアンネの心を甘く溶かした。
彼の肩に両手を持っていくと、マリアンネはそっと引き寄せた。 顔が更に近づいた。 あまりの暗さに、最初ちょっと位置が外れたが、すぐ修正して口と口が触れ合った。
それからは、お互い夢中になってしまった。 男の服はすぐ脱げたが、マリアンネのドレスは背中にボタンがびっしり並んでいて、なかなか開かず、終いには男が力任せに引きちぎった。
生まれたままの姿で抱き合うのが、全く自然に思えた。 二人はマントの上で転げ回り、足をからめ、激しく頬ずりした。
彼にすべてを明け渡したときも、これで大人になったなどとは思えなかった。 逆に、何も思い煩らうことのない子供に戻ったような、むしろ太古の人間に還ったような安心感で、頭が空白になった。
熱に浮かされたひとときが過ぎて、二人は並んで横たわり、乱れた息を整えながら、低い天井に目をやっていた。
やかて男の手が上がり、マリアンネの胸に何かを載せた。 触れてみると、それはいつも服の中にしまっているお守りだった。
「肌身離さず持ち歩いているんだな。 短剣か?」
「そう」
布包みを開いて中身を確かめた後、マリアンネは急に思いついて、上半身を立てた。
「お願いがあるんだけど」
「なに?」
「髪を一房切らせてもらっていい?」
男も肘を使って体を起こした。 囁き声がすぐに返ってきた。
「いいよ。 俺にもくれ。 交換しよう」
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