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――ラミアンの怪物――
Chaptre 65
聞けば、姫はほとんど即死に近い状態だったという。 寝込みを不意に襲われて、何がどうしたのかわからないうちに命を落としたものと思われた。
「抵抗した様子はまったくありませんでした。 女の声で悲鳴を上げ、部屋中を荒らしたのは、ナダールが後でやったことでしょう」
ヴァランタンは唇を噛んだ。
「わたしが奴だったら、誕生パーティーの後、一足先に寝室へ忍び入って、部屋のどこかに潜んで待つ。 そして、みんな寝静まった頃に抜け出して、襲う」
「おそらく、その通りだと思います。 窓を壊して逃げ、回廊から城内に入り、何食わぬ顔で降りていったのでしょう」
伯爵が暗いしかめ面で呟いた。
「そういえば、四年前にあの部屋をぜひ姫の寝室にと勧めたのは、シモーヌだった。 広くて美しい部屋だからと。 それは確かにそうなのだが」
「初めから暗殺を考えて、逃げやすい部屋を選んでおいたわけですね」
ラプノーが歯軋りした。
話の間も、ヴァランタンは次第に落ち着きを失っていった。 じっとしていられなくて部屋を小刻みに歩き回っていたが、遂に我慢できなくなって、ラプノーに尋ねた。
「そのガランス・リボーという娘に会いたい。 今どこに?」
ラブノーは困った表情で答えた。
「もう城にはいません」
ヴァランタンは、ほとんど飛び上がりかけた。
「いない?」
「はい、今朝早く膏薬売りの馬車が来て、これからリュネヴィルへ回るというんで、それじゃ家と同じ方角だから乗せてくれと言って、出ていってしまいました」
「そんな。 逃げるように帰らなくてもよかろうに」
ユステール伯爵は不満そうだった。
「姫の死に、ガランスの責任はない。 城に巣くっていた悪魔を退治する助けになったのだから、給料の他に褒美をやろうと思っていたのに」
「もうガランスも年頃です。 国許で嫁に行って落ち着くんでしょう」
「馬を、そうだ、ルフーを貸してください!」
いきなり大声で喚くと、ヴァランタンはあっけに取られた二人の男を残して、一目散に部屋を飛び出した。
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