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――ラミアンの怪物――
Chaptre 36
大広間の窓にはめ込まれた大きなガラスが、蒸気を当てたように曇っていた。
腰に下げた鍵束をじゃらじゃらいわせながら、難しい顔で階段を下りてきたヴィラールは、濁った薄灰色の光を見て、ますます眉をしかめ、急いで窓に近寄った。
袖でガラスを拭くと、その部分だけ明るくなり、外の景色がいくらかはっきりしてきた。 白くぼんやりした固まりが、綿毛のように空を舞っているようだ。
牡丹雪だ。 つい先ほどまで空は青く、地平の果てまで澄み切っていたというのに。
冬の始まりを告げる憂鬱な眺めに、ヴィラールは眼を閉じて嘆息した。
「明日の朝は冷えるな。 霜に当たると青物はひとたまりもなく縮んでしまう。 室〔むろ〕へ蓄えるよう早めに指示を出さなければ。
この分だと夕方には積もりそうだ。 水汲み場の屋根が傾いていた。 直さなきゃならんが、去年の半分の人手しかないし……あのいまいましい熊めが、捕らえたら八つ裂きにしてくれよう!」
「何を一人で怒っているんだ?」
振り向いて、ヴィラールはいくらか愁眉を開いた。
「ああ、ラプノーさん。 厄介なことですよ。 もう本格的な雪が降り始めた」
「大雪になるか」
ミシェル・ラプノーも窓に近づき、身をかがめて外を覗いた。
「森に餌がなくなるころだ。 熊が人里に出てきやすくなる。 捕まえるいいチャンスかもしれない」
「人食い熊が、またお城に忍び込むなんてことは……」
「絶対にないとは言い切れないが」
ラプノーは慎重だった。
「高い塀をわざわざよじ登らなくても、村には子供や女がたくさんいるから」
「ああ、一段と気の滅入る冬になりそうだ」
ヴィラールが窓から離れて壁に寄りかかった後、分厚いガラスに顔を近づけたラプノーは、西の塔近くに視線を馳せたとたん、あっと小さな声をあげた。
「どうしました?」
ヴィラールが訊くと、ラプノーは大きく息を吸い込み、煮えた鍋のような音を立てた。
「コリンヌがいる。 庭園から駆け戻ってくる」
横からヴィラールも外を覗いた。
「本当だ。 男と一緒だが、あれは、と」
詮索好きな目が動いた。
「おやおや、クレマンですよ。 侍従の」
「ふたりとも勝手に持ち場を離れおって。 見張りはどうなったのだ!」
そう叫ぶなり、ラプノーは大股で階段に歩みより、二段飛ばしで四階へ駈け上がった。
まさにそのときだった。 短剣を握りしめ、血のにじんだシャツをはためかせて、メイヨーが長い廊下を走ってきたのは。
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