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――ラミアンの怪物――
Chaptre 17
きびきびした態度で、返事も打てば響くようなメイヨー青年が気に入って、カピュランはすぐにヴィラールのところへ連れて行った。
客たちが去った後の片づけに追われていたヴィラールは、カピュランの人を見る目を信用し、メイヨーを一瞥〔いちべつ〕しただけで雇うことにした。
「人手が足りないんだ。 馬番だけでなく雑用もやってもらう。 いいか?」
「はい」
青い眼の青年は、張り切って答えた。
秋の日は、忙しく暮れていった。 他の召使に混じって、メイヨーも客室から水差しを回収して一階に下ろし、忘れ物やゴミをまとめて運んでいた。
すると、階段を降りているときに、横の小窓からかすかな悲鳴が聞こえてきた。 メイヨーだけでなく、同時に壷を抱えて下ってきたトマ・ゴーティエという下男も、はっとして立ち止まった。
「なんでしょう?」
メイヨーが尋ねると、トマは犬のように鼻をひくひくさせて耳を澄ませていたが、やがて答えた。
「東の庭のようだな。 熊がどうとか喚いている」
「捕まったのかな」
若者二人は顔を見合わせ、荷物をかついだまま、大急ぎで残りの段を駆け下りた。
手早くごみ類を捨て、裏口を出ると、薄暮の庭をどんどん走っていく人影が、いくつも見えた。 メイヨーとトマもその中に混じって、叫び交わしながら急いだ。
「とうとう熊が見つかったんですか?」
前を小走りで進んでいたカピュランが、肩越しに振り向いて答えた。
「わからん! また襲われたんじゃなきゃいいが!」
誰かが気を利かせて、大きな松明を持ってきたため、前方は明るくなったが、光の届かないところが前よりずっと暗く感じられた。
城の東翼と、礼拝堂の尖塔とで、東庭は挟まれていた。 長方形の細長い庭は、すぐに雇い人や騎士たちでごった返した。
人垣を分けて、ミシェル・ラプノーが逞しい姿を現した。
「おい! 悲鳴を上げたのはいったい誰だ!」
横合いから、洗濯女のマリーが押し出されてきた。 そして、痙攣するように震えながら、弱い声で言った。
「あれ……あれに躓〔つまず〕いたんです。 礼拝堂を回って、お城の裏口から入ろうとしたら」
わなわなした指が、石畳の一角を指した。 人々は一斉に目をこらし、松明をつきつけた。
そこには、紐のついたじょうごのような物が転がっていた。 近くの男が、片脚を上げてエイッと蹴飛ばして裏返すと、それは、千切〔ちぎ〕れた口輪の残骸だった。
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