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表紙


――ラミアンの怪物――

Chaptre 11

 ガランスは、必死にドアを押して中へ入ろうとした。 だが、扉には僅かな隙間があくものの、どうしても大きく開かない。 下に何かが落ちて、挟まってしまったらしかった。
 その間も、悲鳴は次第に弱くなりながら続いた。 コリンヌが寝巻きのまま走り寄って、二人で力任せに扉を押しまくった結果、ようやくギシギシ言いながら、少しずつ開いていった。

 やっと人一人通れるほどの間ができた。 そのまま飛び込もうとするガランスを、コリンヌが止め、壁にクロスした形でかけてあった戦斧と剣を掴んで、引き下ろした。
「殺されたいの? どちらか持って!」
 よく見もせずに、ガランスは戦斧のほうを掴み、隙間から躍り込んだ。

 まるで別の部屋だった。 窓の鎧戸が無残に千切れ、空が大きく見えていた。 そして、きちんと並んでいたはずの家具は、大風に吹きまくられたように倒れ、歪み、あるいは叩き壊されて床に飛んでいた。
 その一部が、扉の動きを妨げていたのだ。 足元の板切れを蹴ってどかせると、ガランスはためらいなく、ベッドに走った。

 ベッドは、天幕が下りたままで、中が見えなかった。 しかし、近づくにつれて、ガランスの顔が歪んだ。
――血の匂い……!――
 襲撃者がまだいるかもしれなかったが、ガランスはしゃにむにずっしりした天幕を握り、引きちぎるようにして左右に開いた。


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 数分後、夜着の上にマントを巻きつけただけの姿で、青ざめたコリンヌが回廊を走り抜けた。 行き先は、右の塔にある城主エドゥアールの居室だった。

 城主の部屋に入ったコリンヌは、そこに十分ほど留まった。
 それから、エドゥアールと彼の腹心ミシェル・ラプノーを伴って、姫の寝室へ引き返した。


 さらに小半時以上経ってから、早馬が出された。 城下町にいる医師のデュケを呼びつけるために。
 この頃になると、何か大変なことが起きたのが、城内に知れ渡り始めた。 たいていの客たちは、呑気に寝こんでいたが、馬屋や台所ではひそひそ話が交わされ、暗い波紋のように、次から次へと広がっていった。

 やがて、ヴィラールが一階の召使部屋に来て、あわただしく尋ねた。
「昨日の一座はどこにいる? 芝居と奇術をやったネッケル一座は?」
 薪を運んできた下働きの男が、驚いて声を上げた。
「ネッケル? とっくに出ていきましたさあ」
「いつ!」
 男は頬を撫でて考えた。
「昨夜のうちですよ。 コルドンが芝居を覗いとったから、奴に訊いてください」





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