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―127―
一週間が、足かせに重りをつけた囚人のようにのろのろと過ぎ去った。
もう休暇が終わり、原隊へ復帰したはずのヴァルからは、連絡がなかった。 今のところ戦争はどこでもやっていない。 新聞の一面は静かだ。 三面記事にも、軍人関係のゴシップはまったく載らない。 まったく無風の七日間だった。
リーゼは相変わらず忙しく日々を過ごしていた。 声の輝きは少しずつ戻ってきたが、翳りは去らず、そのせいで、音域が変わりつつあるのかと密かに囁かれた。
喉は筋肉だから、年と共に少しずつ変化してゆく。 ソプラノがメゾになったり、アルトに近い音質になったりすることは、珍しくなかった。
「喉の使いすぎですか? とロベルトに訊かれたよ。 心配だって」
手帖を見て眉をしかめながら、アイメルトが言った。 彼は、舞台化粧を落としているリーゼの横で、椅子に片足を乗せ、過密スケジュールではないか検討しているところだった。
白塗りの白粉をぬぐい去って、つやのある素肌に戻すと、リーゼは改めて薄く頬紅を入れた。
「ロベルトに会ったの? 懐かしいわ、また共演したい」
「彼もそう言ってたよ。 枢機卿のパトロンがいるなんて噂を本気にして悪かったって」
驚いて、刷毛を持ったままリーゼは首を回した。
「それでなんとなくよそよそしかったの?」
「そうらしい。 仲良くして誤解されたら、君に迷惑がかかると思っていたようだ」
「まあ、気を回して」
リーゼは苦笑した。
「でも、相変わらずいい人ね、ロベルトって」
「君に悪気がないから、自然と良い人間が回りに集まるのさ」
手帖をパタンと閉じて、アイメルトはさりげなく話を持っていった。
「そうだ、気分転換に昔の仲間で集まるのはどう? ロベルトも、テオ・エックホーフもそこそこ成功してるし、エルフリーデはスイスで『美しきエレーヌ』の役を貰ったそうだ。
みんな君に会いたがってる。 どうだい? マリツキーで同窓会を開くのは?」
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