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 その92 謎が見えた





 そこで藍音は、思いついて訊いてみた。
「手紙の暗号、解けた?」
 加藤は一声唸った。
「あれっきり。 数字は電話番号じゃないし、大空って人名かと思って調べたんだが、マルガ……じゃない渡部さんの知り合いにはいなかった。 ほら、やたらきちんとした人だから、ちょっとした知人でも住所録や手帳に書いてあるし、こっちで調べた中にもなかったんだ」
「私はオー・オー・空っぽで、ゼロ三つかなと思った。 でもそんなにゼロが続くのは変でしょう?」
「そうだね。 銀行の支店番号や口座番号でもないし」
「なんでこんな面倒くさいやり方で、言い残そうとしたのかな」
「もし手紙を誰かに読まれても、ばれないようにだろ。 自分で投函できなかったから」
 じゃ、よほど大事なことなんだ。
 藍音は身が引き締まるのを覚えた。
「秘密があって、そのせいで殺されたと思う?」
「うん……言いにくいけど、たぶん」
「じゃ、どうしても解読しなきゃいけないね」
 自分に言い聞かせるように、藍音はきっぱりと口にした。 渡部は寿美と藍音の母子に重大な秘密を託して、二人なら伝言の謎を解けると信じたのだから。




 夜になって、ゼミの友人から電話がかかってきた。 翌日の講義が休講になったのを教えてくれたので、藍音は感謝して、少し噂話に付き合い、冗談で締めて電話を切った。
 その後、画面をぼんやり見ていたときに思いついた。 そうだ、『大空』を調べてみよう。 何か特別な項目が見つかって、ヒントになるかもしれない。
 すぐに検索画面を出した。 大空つながりの語句の説明、大空はるかという女優の紹介、カフェ大空……。 何万もの項目数を見て、藍音は脱力してしまった。
 ぜんぶ見るなんて、とても根気が続かない。 そもそも、何がヒントにつながるか、わからないんだし。
 意味ない努力だったかな、と思いながら画面を閉じようとしたとき、ふと目が横の宣伝コーナーに止まった。
 新しいブログ提供会社ができたらしかった。 大空コムという名前の。
 藍音はちょっと考えた。 ブログで自己発信する人は、爆発的に増えている。 といっても、いわば世界中に発表しているようなものなので、秘密を書くのには向かないはずだが。
 物は試しだ。 軽い気持ちで、藍音はその大空コムのトップページに飛び、ログイン欄に、番号を入れてみた。
 数字をどこで切っても、管理場面には入れなかった。 それで今度は、サイト検索欄に書き入れた。
「ええと、俳句の残りの言葉は『雲浮かぶ』、だよね」
 声を出して確認しながら入力し、ポチッとボタンを押したとたん、いきなりブログ・サイトが現われて、画面を占領した。











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