表紙目次文頭前頁次頁
表紙

 その54 犯行の推定





 信じられなくて、藍音は眉を寄せた。
 無視してたって、どういうこと?
 あんなに写真を集めて大事に取っておいてくれたのに、私に関心がなかったって?
 どうも話が噛み合わないのを、藍音はうすうす感じ始めていた。




「で、敵は確保したんですか?」
「さっきな。 一時間ぐらい前に任意かけて、今山村さんが調べてる」
「一時間? すぐ落ちなかった?」
「まだらしい」
「へえ」
 加藤はちょっと驚いた。
「あの山村さんが?」
「相手は若くても女だからな。 けっこうしぶといんじゃないの?」
「よくわからないんですけど」
 加藤は率直に訊いた。
「最終的に、どういう犯行手順てことになったんですか?」
 すると元宮は顎を掻いて、ちょっと黙った。
「いやーまだ捜査会議前なんで、すり合わせがよくできてないんだが」
「わかる範囲で教えてくださいよ」
「ともかく、まず娘がガイシャの家に訪ねてきた。 バイトの終わった夕方だろう。
 呼ばれて来たんじゃないらしい。 ガイシャからは電話してない。 偶然か、それともヘルパーの来る時刻を狙ったのか、鍵がかかってなかったからスッと入り込んだ」
「それで口論になったと?」
「たぶん。 で、カッとしたか何かで、ガイシャの側頭部を殴った。 防禦創がないから、まったくの不意打ちだったんだろう」
「それとも計画的だったか」
 熱心に考えて、加藤は主張した。
「だって、そんなに都合よく、とっさに持ち上げて殴れるような物が、あの客間にあったですかね?」
「わからんなぁ。 凶器が残ってないから」
「一昔前なら、そこらへんによくガラスや金属の灰皿が置いてありましたけどね。 ヘルパーの話だと、ガイシャは煙草を吸わないし、テーブルにもなかったと」
「今朝わかったことだが、殴った角度から言ってホシは右利きで、推定身長は160から165センチぐらいだそうだ。 マルジュウは162だから、合う。
 一見細く感じるが、高一のとき砲丸投げで学年トップだったそうで、腕力は相当あると見た」
 それから元宮はもう一度顎を掻いた。
「彼女ガイシャに似てるよ。 いいとこ取ってるというか、相当な美人だ」
「早く見てみたいですね」
 話の流れ上、加藤も口を合わせた。











表紙 目次 前頁 次頁
背景: はながら屋
Copyright © jiris.All Rights Reserved
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送