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皺になったシーツの上で、二人は寄せ木細工のようにぴたりと抱き合って横たわっていた。
肌を触れ合わせているのが心地よかった。 感触が安心できた。 まるで太古の海に浮かんでいるように。
「寝ちゃいそうだ」
ぼんやりした声で、真路が囁いた。 絵津は膝を動かしていくらか体を縮め、具合よく真路の懐に収まった。
「ふたりで寝よう。 保育園のお昼寝みたいに」
ものうい夏の昼下がりと、キャラ柄のサマーケットが思い出された。 目を閉じたまま、絵津は微笑んだ。
「保育園に行ってたの?」
「うん、お母さんがレジのバイトしてた頃は」
「沢山でゴロゴロ寝るの、楽しいだろうな。 俺は一人っ子だったし、修学旅行もホテルの二人部屋でさ、そいつがイビキかいて、うっせーの」
二人はクスクス笑い、もう一度深いキスをしてから、目を閉じた。
目覚めたのは、太陽がオレンジから銅色に変わって海に没しようとしている頃だった。
絵津が先に瞼を開き、意識がはっきりするまで天井を眺めていると、真路が深く息を吸ってから目をごしごしこすった。
「今何時?」
ぼやけた声が訊いた。 絵津はサイドテーブルにある灰色の目覚し時計を見て、同じように寝ぼけた声で答えた。
「七時」
「えっ?」
信じられなくて、二人は同時に時計を覗きこんだ。
「ほんとだ。 もう七時だよ」
「そんなに寝てたの?」
「うん……安心したからだな、きっと」
裸のまま、真路はベットにあぐらをかき、両腕を伸ばして大あくびをした。
その腕を下ろさずに、彼はひどく優しい目をして、絵津を眺めた。
「大好きだよ」
突然、絵津の喉に嗚咽がこみ上げた。
だが、彼女は泣かなかった。 たとえようもない幸せなときに、涙を流すなんて間違ってる。
代わりに、絵津は上半身を起こして手を伸ばし、そっと真路の唇を指先でたどった。
「もう離れないでいいんだよね」
真路は、大きく何度も頷いた。
澄んだ眼がいっそう濃さを増して、怖いほど真剣だった。
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