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真路は、それから四十分ほど木実の家にとどまっていた。
だが、どんどん口数が少なくなり、終いには自分がどこにいるのかもはっきりしないぐらい、ぼーっとしているのが見えてきて、奈々歌が笑いをこらえながら助け舟を出した。
「さあ、もうお昼御飯食べたし、あんまり暑くならないうちに遊びに行く?」
はっと目が醒めたように顔を上げて、真路は感謝の眼差しを奈々歌に送った。
「あ、はい。 ごちそうさまでした」
「いいえー」
真路に次いで、絵津もいそいそと立ち上がった。
「ちょっと送ってくね」
「急がなくていいよ〜」
木実がニヤニヤ笑いながら言ったため、絵津は赤くなった。
奈々歌が言ったとおり、外はカンカン照りで、切り絵のように、建物の影がくっきりと道を明暗に分けていた。
二人は肩を寄せ、しばらく黙って歩いた。
やがて、絵津が昔万引きを見た本屋の前を通りかかった。 真路は目を細めるようにして、キラキラと太陽光を反射しているガラス戸を見やった。
「ここ通るたびに、クソ恥ずかしくてさ」
絵津もあのときのことを思い出した。
「ああ、自分のもんだって宣言しちゃったから?」
「言うなよ」
真路はぐっと声を落とした。
「そんなふうに想像したこと、ないか? 何度も道ですれ違ったら、偶然じゃなくて運命だ、とか」
「あるけど」
「だろ? 俺も親父から話聞いたとき、そう思っちゃったんだ。 迷惑?」
「ううん、そんなことないよ」
絵津はそっと真路の腕に触れて、微笑んだ。
すぐに真路が、その手の上に自分の大きな掌を重ねた。 そして、息を詰めるようにして尋ねた。
「うち、来る?」
絵津は、大きく頷いた。
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