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溶け込んでいるといえば、佐山も野村家にしっくり入り込んでいる感じだった。 彼は夕食のときまで留まり、皿を出したり、肉を焼いたり、パスタのトッピングをしたりしていた。 まさに家族の一員だ。
くつろいで話をしているうちに、絵津にも自然に佐山のことがわかってきた。 彼は化学系の大学院生で、すでに、かなり名の知られている企業の内定を貰っていた。
佐山を観察していると、もう一つわかることがあった。 彼は木実に惹かれている。 あまり顔には出さないが、ふっと気を抜いたとき無意識に木実の姿を追っている視線には、うっとりしたものさえ感じられた。
夕飯の片づけがすべて終わり、佐山はみんなに挨拶して、骨組みだけのバギーに乗って帰っていった。
十一時過ぎ、絵津は木実の寝室でサブベッドを引き出し、夏用の上掛けを広げた。
その上に、木実がポンと枕を置いてくれた。
「いいねー、夏になって、こうして二人で枕並べて寝ると、なんかほっとした気持ちになる」
それから木実は、ぎょっとなる言葉をさりげなく付け加えた。
「結婚して子供ができても、こうやって夏は一緒に過ごしたいねー」
絵津が答えに詰まっている間に、木実はさっさと話を続けた。
「大崎って人と、もう婚約した?」
ゆったりと横になり、手足を伸ばしかけていた絵津は、思わず体を起こした。
「してないよ。 したら真っ先に木実に話すって」
「うん」
木実は、上掛けの襟の皺を伸ばし、ベッドに坐ったまま脚にかけ直した。
「そうだとは思うけど、なんとなくさ」
「なんとなく、何よ」
「ふっきれてないなって気がするんだ」
絵津の顔に、ヴェールのように仮面が降りた。
無表情のまま、絵津は固い声で言った。
「真路のこと? あれっきりだから。 もうほとんど思い出さないし」
「ね、見に行ってみない? 前みたいに」
「なんで?」
「なんでって、向こうにも他の子がいたら、もうどうでもいいって気持ちになれるんじゃない?」
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