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月曜日から、絵津は学校に戻った。
これまで無欠席だったため、病欠届を出してあっさり受け入れられた。 出席日数は充分足りているし、友達も、なぐさめているのかからかっているのかわからないようなことを言った。
「夏風邪って重くなるんだよね。 もしかして鳥インフルだったかもしれないから、学校へ来てくれなくて助かったよ」
また、普通の生活が始まった。 毎日がいつも通りで、拍子抜けするほどだ。 わずかな間だが、幼なじみと駆け落ちしていたなんて、自分でも信じられなかった。
あれから、真路とは逢っていない。 電話連絡もなかった。 絵津のほうからも何のアクションも起こさないまま、月日は淡々と過ぎていった。
新しい展開といえば、月の後半に大崎が顔を出すようになったことぐらいだった。
レンタカー屋は休日のほうが需要が多いから、大崎の休みは火曜か水曜で、それも不規則だった。 確実に休めるのは、給料日前の二十日から二十四日頃だ。
表向きは、母の静に会いに来るのだが、本当の目当ては、三人ともわかっていた。 それでも、息子がひんぱんに現れるので静は喜んでいたし、絵津もできるだけ学校から早く戻るようにしていた。
いつの間にか、習慣ができあがった。
大崎が午後に来て、寝起きの静に近況を語り、よもやま話をしているうちに、絵津が帰ってくる。 その後、三人で外に出て、静を仕事に送って行き、絵津は大崎と食事して、マンションに送ってもらう。 たまには映画へ行ったり、夜の海を見に行くこともあった。
大崎が絵津を好きなのは、はっきりしていた。 ただ、彼は遠慮していた。 真路より四年ほど年上なので、その分だけ絵津が子供に見えるらしく、ちゃんと打ち明けるのは高校を卒業してから、と考えているふしがあった。
紳士的なその態度に、絵津は惹かれた。 でも同時に、歯がゆくもあった。 いつまでもガキ扱いされるのは、気詰まりだった。
奪ってほしいとは言わないが。
やがて秋が深まり、ベランダを飾っていた夏の花々を、業者が秋の鉢と取り替えに来た。
その日は静の店が休みで、しかも半月ぶりに将美が訪れていて、二人はにぎやかに世間話をしながら、てきぱきと作業する業者を見守っていた。
文化祭の打ち合わせがあり、絵津はいつもより遅く、六時頃に帰宅した。 喜んで迎えた母たちに、体育館で行なわれるチアリーディングや連太鼓などの出し物を説明していると、静が不意に言った。
「見たくなっちゃったな。 ねえ将美、優くんに連れていってもらっていい?」
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