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真路の住む部屋は、旭町にあった。 交通の便のいい中心街から少し奥に入ったところで、すっきりした五階建てのマンションの四階だった。
一坪ほどの玄関を入ると短い廊下があり、右がトイレとバス・洗面、左がDK、突き当りがフローリングの個室で、その横が和室だった。 二面採光だから、どの部屋も明るい。 しかも、思った以上に広い。
ここを夏休みの間も借りっぱなしなんて、家賃がもったいないな、と絵津はつい考えた。
個室には座卓とクッションと低い本棚、それにセミダブルのベッドが置かれているだけだった。 八畳近くあるので、殺風景に見える。
服やバッグなどは、ウォーキング・クローゼットにすべて押し込んであった。
「あっちの和室はほとんど入ったことない」
リビングとつながっている畳の部屋を、真路は指差してみせた。
「押し入れついてるから、好きに使って」
「うん、ありがとう」
「布団、いちおうレンタルする?」
とたんに、絵津は顔が燃えるように熱くなった。
「うん……ベッド狭くなるでしょう?」
「俺はかまわんけど」
真路は楽しげだった。
「ただ、寝相悪いから、夜中に突き落とす怖れあり、だな」
「そうなの?」
「試してみる?」
真路は本格的な笑顔になった。
「どっちみち、今夜は一緒だ。 布団間に合わねーだろ?」
グレイとブルーの細かいチェックのシーツを二人で敷き直して、その上で愛し合った。
真路の背中の感触を、絵津の指は覚えていた。 肩の後ろから斜めに延び、腰に繋がるなめらかな筋が、平らな脇腹まで続く。 掌でたどると、柔らかな中に芯のあるレザーのようで、不思議な感触だった。
二人は裸のまま寝てしまった。
翌朝、絵津が目を開けると、顔のすぐ横に真路の毛脛〔けずね〕があって、びっくりした。
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ぐらん・ふくや・かふぇ
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