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空がすっかり暗くなった頃、真路は稲城のインターから少し道を下がって、壁に梁〔はり〕を出した昔のヨーロッパ民家風のコーヒーショップに寄った。
「ここで軽く食ってこう。 エビフライとか、うまいんだ」
広々とした店は静かで、感じがよかった。
絵津はメニューを見て、ガーリックトーストとミルクティーにした。 合わせたのか、真路はボリュームのあるカツサンドを頼んだ。
豪快にほおばって、一口飲み込んだ後、真路が尋ねた。
「絵津」
「なに?」
「お母さんより、俺を信じてる?」
黒く輝く真路の瞳に見つめられて、絵津は思わず目を伏せた。
「まあ……そうかな」
「だからついてきた?」
「うん」
「あれからもっと俺の悪口聞かなかった?」
絵津は勇気を出して目を上げた。
「ぜんぜん」
「そうか」
更に二口で大きなサンドイッチを食べ終わると、真路は呟いた。
「物足りねぇ」
「私の半分食べない?」
母の言葉によるショックが今ごろ来て、絵津はあまり食欲が湧かなかった。
真路はためらわずに、絵津の皿から取った。 それもあっという間に胃袋に収めてしまうと、彼は子供のような笑顔を見せた。
「デザート頼もう。 甘いもんは別腹っていうから、食ってみなよ。 シロノワールってのが評判いいんだ」
確かにデザートはおいしかった。
ブレンドコーヒーをもう一杯飲んで店を出ると、真路は絵津の肩を抱き寄せ、ふわっと風になびく髪に少しの間顔を埋めた。
低音の声が、思いもよらない言葉を囁いた。
「仲よくしような。 これからたぶん、一生一緒にいるんだからさ」
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