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これはもう話し合いとはいえない。
絵津は、そこで電話を切った。 将美はかけ直してこなかった。
木曜の夕方、真路から電話があった。
「絵津? 明日海に誘おうかと思ったんだけど、なんか台風が上がってきたみたいで、波が高いんだと」
絵津はすぐピンと来た。
「泳ぐのは駄目だけど、サーフィンにはいいって?」
「そーなの」
低い笑い声が伝わってきた。
「久しぶりに志田下へ行くかって話になって。 絵津も来ない?」
「サーフィン見に?」
「うん、あそこ元々泳げないから」
「そうなの?」
「波が荒くて」
「ふうん」
真路は、仲間に絵津を紹介しようとしているのだ。
行ってみたい気がした。 だが、一つ大きな問題があった。
「あのね」
「なに?」
「サーファー仲間に、嶋さんっていう女の人いる?」
真路には珍しく、すぐに答えが返ってこなかった。
やがて、用心深く聞こえる声が言った。
「いるよ。 ほら、初キスしたときに声かけてきた、ピンクのビキニの子」
やっぱり。
彼女は、このマンションの前でも真路を引き止めようとしていた。 あのしゃれた綺麗な子が、嶋祥子なんだ。
どう告げたらいいか素早く考えた後、絵津はできるだけ淡々と口にした。
「その嶋さんて人が真路の恋人だって言ってる人がいて」
「誰だよ」
真路の声が、唸りに近くなった。 怒っているようだ。 絵津はすぐ答えた。
「うちの親」
「よく一緒にいるから?」
「ちがう。 嶋さんが真路の紹介で病院行ったから」
今度こそ、真路は絶句した。
それから、吐き捨てるように呟いた。
「よく言うよなー。 自分はなんだってんだ、あのビッチ」
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