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デスクに置いた時計を見ると、正午を回っていた。
「腹減ったよなー」
振り返ると、ズボンを穿き終わった真路が、頭からシャツを被っていた。
「駅の傍にフードコートあったろ?」
「うん、ある」
「あそこ行くか」
「そうね」
床に転がった帽子箱からメッシュハットを出して被り、ちょっと鏡で確認してから、絵津はバッグを持って、真路と部屋を出た。
確かに、外は暑かった。
ぎらつく日光のせいで、空は青というより白に近く、アスファルトの道にかげろうが揺れていた。
小さな店舗のボックスが、ひしめきあって鉤型に並ぶコート内に入ると、空気がヒヤッとして、焼いたソースの香ばしい匂いが鼻をついた。
席は八割がた、若者で埋まっていた。 真路と絵津は、二人ともバラエティサンドを注文して、番号札を取ってから座席を探した。
「あっち行こう」
「うん」
食べ終わった三人組が横をすり抜けていった。 間を通られないように、真路が絵津の手を掴んで引き寄せた。
そのまま、テーブルに着くまで二人は手を繋いでいた。
「これから、どこ行く?」
「レンタカー借りて、近場をぶらぶらするか」
「中の島公園とか?」
「あそこ、この時期は潮干狩りのガキんちょだらけだろ」
真路は笑った。
「俺も昔行った。 けっこうたくさん採れて、味噌汁とかずっとアサリになるんだよな」
絵津も思い出して微笑した。
「子供のときって言ったら、真路はいつも三人だったね、友達と」
「ああ、横井と大川な」
真路はうなずいた。
「あいつら今でもマブ」
それからポケットに手をやって、学生証を確かめた。
「じゃ、そろそろ行くか」
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